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私立大学に免税措置=代償に公立大学不合格者受け入れ

3月 2日(火)

  【エポカ誌】大学改革が始まった。就任後一カ月も経たない中、タルソ・ジェンロ教育相は高等教育制度の抜本的変革を年内に提唱する責務を負った十人の専門家からなる検討チームを立ち揚げた。
 同チームの議論はまだ始まっていないが、同相は緊急の課題に取り組むための方策をいくつか発表した。その中で最も論議を呼んでいるのは、全国の私立大学千四百四十二校すべてに対し、免税措置をとるというものだ。
 その引き換えに、私立大学は国公立大学の入試に合格できなかった受験生たちを受け入れなければならない。その結果、黒人、インジオ、元受刑者、低所得の学生たちが恩恵を受けるとみられている。
 それと並行して教育省は私立大学の監査を強化すると同相は約束し、「質の低い大学とは手を結ばない」とエポカ誌のインタビューで答えた。免税措置により、政府は二億二千万レアル以上の減収を覚悟しなければならない。その代償はわずか一年以内の十二万人の入学者受け入れだ。
 教育省の試算によると、同額を国公立大学に投資しても、二万人しか受け入れられないという。私立大学入学者一人当たりの国庫負担額は、連邦大学の五分の一で済む。施設の維持費、研究への投資費用を政府が負担しなくて済むからだ。
 政府は同措置による財政負担を減らすために、受け入れ対象となる学生の少なくとも二〇%に一定の割合で授業料を負担してもらうことを検討している。対象となった学生は授業料の一部額に相当する奨学金を受け取るか、授業料の三〇%を支払い、残りは卒業後に返済する学生融資制度(Fies)に授業料の融資を申請できる。「こうした学生の負担分は免税分を上回るので、政府の負担はゼロになる」とハダッド教育省事務局長官は見積る。
 しかし、教育省の案は反発も生んでいる。「公的資金を私立の教育機関に投資するのは間違っている」と全国教職員組合のルーカス組合長は批判した。教育省はこの案が公教育の民営化を偽装したものではないとしている。元受刑者の受け入れも問題視されている。
 私立大学は当面損害を受けない。化学や文学など、競争率が低い学科を中心に五十八万人の定員割れが起きているからだ。こうした状況の下では、学生の受け入れは容易い。医学部や法学部などの人気学部の場合、大学側は定員を増やすことで対処できる。私立大学が定員の六二%しか満たせていないのに対し、国公立大学は定員の九五%が埋まっている。
 ブラジルでは十八歳から二十四歳までの若者の大学進学率は一一・四%に過ぎず、アルゼンチン(三九・二%)、チリ(二一%)、ボリビア(二〇%)のそれを下回っている。