海外で一番俳句が盛んな国―NHKがブラジルをそう位置付けてから久しい。質、量ともにといっていいのか、毎年のNHK全国俳句大会には、他国や(日本の)他県に比較して、圧倒的に多数の作品が送られ、入賞もする▼平成十五年度の同大会で、海外作品賞を受賞した山口敏子さんの句「星月夜海に葬る移民船」について、選者たちの間でおもしろい議論があった。もちろん、ブラジルへの渡航途中、船内で死亡した移民の水葬を詠んだ句、ということに落ち着いたが、「移民船」「葬る」に別の解釈もあって、鑑賞のむずかしさを考えさせられた▼NHK俳壇選者の、俳句の周辺の博識をいつも驚きの気持ちで眺めている。過去、たくさんの俳句をみて来た人、毎日が俳句漬けの人は、直感のように、他人の作句の意図を理解できるのだろう▼門外漢の筆者は、そうした選者たちと、テレビ画面に掲示された作品のとらえ方が同じだと、なんとなく嬉しい気分になる▼ブラジルの作句者が日本の知名の俳句大会に応募する際、「アマゾン河」や「広大な牧場(農場)」「老移民」などをテーマ、背景にすると、選の際採られる率が高い、ときいたことがある。確かな数字はないが、事実のようだ。けっしておかしいことはない。日本で作句されのも、ブラジル題材も一句は一句には違いない▼それでもアマゾンを体験したことがない、日本の選者には移民作句者は、より殊勝に映るのだろうか。ともあれ、認められるのは嬉しい。(神)
04/02/20