2月14日(土)
【エスタード・デ・サンパウロ紙3日】中世ヨーロッパやイスラム圏の写本などに多く見られる文字を美的に書く術、西洋の書道とも言えるカリグラフィーア(能書法)を教える学校が、時代の波にもまれながらも、サンパウロ市中心地で経営を続けているという。
デ・フランコ・カリグラフィーア学校は、ジェネラル・オゾーリオ通り724番にある。1915年に同じ道路で創業した同校は、1932年にジアンニーニ・ギター工場ビルがあった現住所に移転した。
同校施設はビルの地階、1階、2階(日本の1~3階)にあり、「アントニオ・デ・フランコ」と名乗る4世代の校長が同校を守ってきた。サンパウロ州の伝統的な名家の一つマタラッツォ一族などが、同校でカリグラフィーアを学んだ。
デ・フランコ学校では情緒豊かな昔の光景を見ることができる。飾り付けられた鉄製の門や天井の高いホール、タイルの敷かれた床などが今でも残されている。教室の家具は開校当時のもの。支払明細書などは、レミントン社の古いタイプライターで書き込まれる。パソコンの使用は一切無用だそう。
「人間は今でも、機械より優れているんですよ」と哲学的な発言をするのはアントニオ・デ・フランコ校長(54)。同名の創立者の孫である。同校長の息子、同じくアントニオさん(19)は、早くもカリグラフィーアを教えている。「最高に素晴らしい写真でも、1枚の油絵にはかなわない。それが、パソコンとカリグラフィーアの違いですね」。
古風な教室を満員にするほどの多数の生徒たちが、ゆっくりと、ゆっくりとペンを動かす。ハイテク時代にそのような光景を見ると、まるでタイムスリップをしたかのような不思議な気分になる。
ジョーナス・カウさん(18)は、大学受験時に美しい字を書いた方が有利だと考え、同校に入学した。「醜い字のせいで一つでも答えが間違いだと誤解されたら、受験生千人に先を超されてしまうだろう」。
弁護士のカルロス・ストリーノさんも生徒の1人。「事務所ではパソコンしか使わないので、手がなまってしまい、顧客の前でメモをとるのが恥ずかしかったんです」と照れくさそう。
英語教師のレオポウド・S・マルチンスさんは、生徒の子供たちから「汚い字だなぁ」と笑われたので、カリグラフィーアを習い始めたという。「カリグラフィーアは1950年、学校の科目から削除された。字をきれいに書けない人々が2世代続いている。字が汚くて生徒が分からないのでは、知識があっても意味がない」と重要性を訴えている。