モスクワの地下鉄を自爆テロが襲い死者四十人、負傷者が百二十人という大惨事が起きた。チェチェン独立派の寡婦が火薬を背負ってか身体に巻き付けての自爆らしいのだが、モスクワの治安はこのところ悪化の一途を辿っている。〇二年に劇場を占拠した武装派もチェチェン独立を目指すグループだった、このときは政府の特殊部隊が突入し多くの観客を解放したけれども約百三十人が死亡している▼昨年の十二月には南部で電車が爆発し、クレムリン近くの道路でも女性二人による自爆テロとチェチェン独立系のテロが頻発している。プ大統領は、こうした独立への動きに対し厳しい態度で臨み軍隊を送り武力行使にまで踏み切っているのは周知の通りである。こうした強硬姿勢は国民には好評だけれどもイスラム教のチェチェンでは反発を招き「自爆テロ」となって現れていると見ていい▼この事件を捉えてプ大統領は「テロは二十一世紀の黒死病」とし掃討に断固たる決意を表明しているのだが、これまでも抜本的な解決策はない。今も腹心を現地に派遣し強い態度で支配しており、こうした市民不在の治世が続く限り「テロ」が簡単になくなるとは考え難く、双方が納得できるような妥協策を探る必要があるのではないか。三月には大統領選が控えておりプーチン氏の勝利は固いにしても政治的な緊張が高まるのは必至であり強攻策一辺倒からの脱却と融和策があってもいい▼もう一つ加えれば現地の有力紙が、メトロ自爆テロの死者は百人を突破百四十人ほどではないか―と報道しているのも気になる。政府が実体を隠すために情報を抑えているとの説だが、こんなところにも露の陰湿さを感じとらざるえをえない。 (遯)
04/02/10