先日、ブリヂストンの現地法人の工場を見学し、巨大な機器の精密な動きに見入りながら、一本のタイヤにどれだけ日本の高度な技術が凝縮されているのだろうかと想像した▼今年8月、アップルの下請け企業「島野製作所」が同社を独占禁止法違反と特許権侵害で訴えた。ダイヤモンド・オンラインによれば、「パートナーである1次サプライヤーという立場で訴訟の〃反旗〃を翻したのは、世界でも異例の事件」という▼同製作所は、主源アダプタのコネクタなどに使われるピン専業メーカーで、アップルにiphone用部品を提供してきた。しかし同社は合意に反して半年で発注を削減、製作所の技術を使って人件費の安い他国メーカーに代替ピンを製造させ、取引再開を求めると取引済みの在庫の値下げ(約1億6千万円)を要求したという▼年商30億円の中小企業と年商18兆円のマンモス企業、小人と巨人の戦いに譬えられる両者だ。弱者を食い物にするアップルの〃手口〃に苦しむメーカーは島野だけではないようで、「アップル非買宣言」する日本人も現れた。儲けのためなら手段を選ばないやり方は、今どき珍しくもないのだろうが、これが世界一かと思うと虚しくなる。むしろ、だから世界一なのか▼〃ハゲタカ〃のような世界企業とどう渡りあうか―それがガラパゴス化した技術大国日本がグローバル化する上での課題だ。ブリヂストン社内にあった創業者・石橋正二郎氏の言葉「最高の品質で社会に貢献」が思い起こされる。ペトロブラス疑惑でも日系企業の名が挙がってきたが、ハゲタカの仲間になるのか、倫理感を失わずにしたたかに適正な地位を得るのか、難しい選択だ。(阿)