1月31日(土)
【エポカ紙】肥満の克服は飢餓撲滅と同様、ブラジルでは緊急の課題だ。飢餓ゼロ計画は四千四百万人を対象とする一方、肥満者の数はすでに約七千万人―全人口の約四〇%―を超えている。三十種以上の病気の原因となり、入院患者の増加が保健予算を圧迫する深刻な肥満問題にもかかわらず、ブラジルでは肥満撲滅に向けた真剣な努力が足りないのだ。
「当局は飢餓と肥満の同時解決に矛盾を感じるが、両者は相互補完問題だ」とコウチーニョ・ラテンアメリカ肥満協会連合副会長はコメントした。貧困者の間ですら、肥満は飢餓を凌駕している。「ファヴェーラでは、肥満が栄養失調を上回っていることが確認されている」と同副会長は話す。
米国ではここ二十年の間に幼児・青少年の肥満は六六%増加し、タバコと同様、ファストフード店に対する訴訟が発生。ブラジルでは低所得者層を中心に肥満が二三九%増加した。
世界保健機関は肥満が地球規模の疾患で、特に発展途上国を脅かしていると宣言した。世界人口六十億人のうち十七億人が肥満だという。自動車やジャンクフードの普及、コンピューターの前にすわった長時間労働などアメリカの生活様式がブラジル、インド、南アフリカといった発展途上国に広まり、脂肪分や糖分が過剰で、安価な質の悪い加工食品が手に入るようになったため、栄養失調だった多くの人々が肥満に変わった。
人々は本当に必要な栄養分を摂取せずに肥満になっている。ブラジル人の死因の三〇%を占める肥満に対し、中上流階層の人々はダイエットプログラムや運動にお金を費やし、効率的に肥満を解消できる。だから肥満はますます貧困とのつながりを深めつつある。
悪化する状況の下、効果的な公共保健対策が求められている。肥満問題に集団で取り組んだ好例の一つがリオ・グランデ・ド・スル州のラゴーア・ドス・トレス・カントス市だ。
ドイツ系ブラジル人が大半を占める住民千六百人のこの市は二〇〇〇年に、全国で最も肥満が多い市(住民の六〇%)となり、市は対策に乗り出した。ネットや電話を通じて肥満の人に対して栄養や運動の再教育を実施するプログラムが功を奏し、同市は一年間で計三・八トンの減量に成功した。プログラム参加者の平均体重は八十二キロから七十五キロに、一カ月当たりの入院患者数は六〇%、一日の救急診療件数は三五%減少した。
ブラジルの全地方に肥満が広がる中、胃の縮小手術
の必要性が高まっている。平均体重を四十キロ以上超過した病的肥満状態の百万人が公立病院で手術の順番待ちリストに入っており、待ち時間は十年に及ぶこともあるという。
薬剤師のマツイ・ソラヤ・レイコさん(三二)は三年前に胃の縮小手術を受け、通常一・五リットルの大きさの胃を二百ミリリットルにまで縮めた。体重が九十八キロの時には排卵障害を起こしていたが、手術のおかげで四十六キロ減量し、妊娠することができた。
会社経営者のアルベルト・ニノミヤさん(二六)は肥満が心臓に負担となり始めた時に手術を決断した。「肥満にコンプレックスは感じなかったけど、心臓にかかわるなら冗談では済まないからね」。十七カ月で六十キロ減量した後は、誰も彼だとわからなくなっていたという。
あまりにも早く減量できることから理想体重を二十キロ以上超過する人の多くが、他の減量方法があるのに胃の縮小手術のリスクを負う。しかし手術は医者が必要と判断した時だけリスクに見合った利益があるため、安易な考えは禁物だ。
自身が楽しめる運動を見つけ、健康によい食事習慣を身につけることが肥満対策として最も優れている。親は栄養バランスの取れた食事を取るよう子どもをしつけなければならない。六十年代、太った子どもは健康のシンボルだったが、現在は病気の大人の前兆であると理解されているからだ。