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日本館に再評価の声=建設50周年を記念して=総領事館の協力で新展示=公園唯一の民族系施設

1月24日(土)

 石田仁宏サンパウロ総領事は二十二日、イビラプエラ公園を訪ね、上原幸啓ブラジル日本文化協会会長、マリア・グレジオ公園管理局長らの案内で日本館を初見学した。一九五四年、主な建築材料を日本から持ち込み、日本の建築技師ら六人を中心に、同館はわずか四カ月の突貫工事で完成され、サンパウロ市四百周年の贈り物としてサンパウロ市に渡された。サンパウロ市四百五十周年を迎えた今年、八月に築五十年になることを記念し、日本美術品の展示スペースを館内に設ける計画が持ち上がっている。

 現在、日本館に再び脚光があたっている。〃輝かしい都市〃リオと対比して、サンパウロは〃一千の民の都〃と呼ばれる。各国民族の坩堝(るつぼ)にあっても、市中心部に位置するイビラプエラ公園に、自国文化を象徴する建築物をもつのは唯一、日系社会だけだからだ。
 公園内に新たな施設の建築が認められていないこともあり、ここにきて日本館を再評価する声が高まっている。文協は永久管理を任され、現在でも、毎週末には平均四百人の来場がある。
 石田総領事もこの日、「きちんと活用していくことが大事だと思う」との考えを明かし、「市からの要請もあるので、総領事館が所有する美術品を展示するならば、いつでも貸し出す準備がある」と協力を申し出た。
 館内には外務省所蔵とされる甲冑、刀、埴輪の複製、壺といった日本美術品が陳列。これとは別に総領事館が所有する「文化啓発品」の展示が望まれている。昔の玩具、浮世絵、内掛けなどで、普段は一般公開されていない。
 展示場としては、入り口奥の空間が適当とみられている。同館は市の文化財で改増築はできないが、「あそこはコンクリート造りだから可能。うまく仕切り直せば使える」と沖中ロベルト文協理事(美術委員長)は説明する。
 公園にはビエンナーレ館、近代美術館(MAM)、OCAと、文化施設が立ち並ぶ。市役所やピナコテカ(絵画館)としてかつて利用されたパヴィリオン・マノエル・ダ・ノブレガは近く、黒人美術館として再オープンする予定だ。 ロベルト理事は「日本館が五十年も前から、そんな建物と一緒に存在しているのは評価できる。ただ、活用の余地はある」とみる。
 「改築に資金が不可欠だがアイディアも必要。レジストロのKKKK(海外興業株式会社)倉庫を日系移民史料館に変えた建築家のマルセロ・フェラースや、黒人美術館長に就任予定のエマノエル・アラウージョとも相談してみたい」
 今年はさらに、日本館、慰霊碑のある辺りが「東洋エリア」として整備、拡張される。もし展示スペースの改築計画が実現すれば、日本館が市民の注目をより集めることは必至だ。
 八月十五日の開館記念日に式典など祝賀行事を予定する文協の中島エドゥアルド事務局長は話す。
 「来年は文協も五十周年。歴史を振り返れば、日本館の建設メンバーが最初の文協理事となった経緯がある。日本館の再生に取り組む勢いを、文協の記念事業の方にもつなげたい」