1月21日(水)
サンパウロ日伯援護協会(和井武一会長)が昨年初めに実施したブラジル日系社会高齢者実態調査(要介護者老人実態調査)がこのほど、一冊の冊子にまとめられた。金本伊津子平安女学院大学助教授、渡辺薫静岡県立大学短期大学部助手の二人が結果について考察、在宅介護支援のシステム導入を促している。
この調査は大サンパウロ圏に居住する六十五歳以上の日系人約五千人を対象に実施されたもの。世帯構成、収入、医療保険の有無など十六項目を質問した。
日系老人ホームの利用者は以前、多くが身寄りのないお年寄りで特に、男性が目立っていた。しかし現在は二世の入所者が増え、三分の二が家族を持つ。
このような状況を金本助教授は「ブラジル日系社会の高齢者対策は、一つの曲がり角にさし掛かろうとしている」とみる。
希望する介護の形態について、七四・一%が「在宅での介護」と回答した。老人ホームについて、日系社会でネガティブなイメージが持たれていることの表れ。「在宅で介護をいかにサポートできるかというのが、これからの大きな課題」(同助教授)だ。
訪問介護システムの導入、デイケアセンター(通所介護)の設立、グループホーム(日系高齢者による共同生活)のサポートが日系社会で必要とされる。
渡辺助手は「通所介護は施設に比べ少ない予算で行え、採算性も高い」との見解を示し、「日本国内からの人材派遣が有効」だとする。
ただ、ブラジルでは「在宅支援」についての知名度がまだ低く、金本助教授は広報活動の在り方が重要だと指摘している。