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懐かし!移民船=―旧神戸移住センターで模型展―「思うだけでも悲しく声も出ない」=展示15隻「戦没」

1月9日(金)

 神戸市の旧神戸移住センター(国立海外日系人会館をめざしている建物)で移民船のモデルシップ(船の模型)展示会『黄金期の移民船』が開かれている。同市の同好会「モデルシップ友の会」(田嶋昭三郎会長)の会員たちが、紙で製作したもの。船はすべて大阪商船(OSK、現商船三井)に所属していた十五隻。
 移民船は最も古い一九〇〇年の「笠戸丸」建造から、一番新しいのが一九六二年の「さくら丸」。当初、移民船は客が従で貨物が主であった。尤も、移民は片道切符しか持っていなかった。往路は人と荷物が積載されたが、復路は貨物のみだった。
 船の体裁も一九三九年に建造された「あるぜんちな丸Ⅰ」と同型船の「ぶらじる丸Ⅰ」あたりから、変わった。速度がアップ(笠戸丸は一四・四ノット、あるぜんちな丸Ⅰは二一・五ノット)、船体も内装もぐんと豪華になったという。
 一番全長が長いのは「ぶらじる丸Ⅰ」で百六十七メートル、総トン数がもっとも多いのはやはり同船で一万二千七百五十二トン。
 展示十五隻のデータのなかに「戦没」がある。さきの大戦で撃沈されたのである。三分の二にあたる十隻が戦没である。昭和十七年(四二年)から二十年(四五年)の四年間に海に沈んでいる。神戸の展示関係者は「思うだけでも悲しく、声も出ない」といっている。戦没の船名をあげておこう。
 笠戸丸、ぶらじる丸Ⅰ、らぷらた丸、もんてびでお丸、りおでじゃねいろ丸、まにら丸、あふりか丸(一九年建造)、ありぞな丸、ぱなま丸、報国丸。
 模型の大きさは実物の二百分の一、精巧に仕上げられている。モデルシップ友の会のメンバーは、船会社とか関連の会社に関係のある人たちではない。いろいろな職業の二十五人のグループだ。田嶋会長は「戦前の日本の優秀な船の姿を模型の形で残せたらいいな」との思いを込めてつくり始めたという。始めてから十五、六年。細かい作業だけに肩が凝るようだが、作るのが趣味だからそう苦にならない。一隻をつくるのに二カ月から三カ月かける。「日本は海洋国だけに、船に関心を持ってほしい」と念じるという。