1月6日(火)
【ヴェージャ誌】米国のウッズホール・リサーチセンターの研究員で、パラー州連邦総合大学アマゾン高等研究所のデービッド・ギブス・マックグレイス教授は、現実主義の立場からアマゾン地方の森林を現在の状態で保護する考えを否定する。同教授は森林保護区やインジオ保護区を残すことに加え、行政当局は無秩序な開発を指導・監督し、鉱業、牧畜業、農業といった産業活動との共存をはかるべきだとしている。ヴェージャ誌は同教授にインタビューを行った。
ヴェージャ誌(以下V)=アマゾンの森林破壊には賛成の立場ですか。
マックグレイス教授(以下M)=私はブラジルで七〇年代初頭以降、アマゾンの森林破壊の進行状況を見守ってきた。森林破壊には賛成ではないが、私は現実主義者だ。この問題は現在まで続いている。森林破壊を食い止めるために多くの対策が打たれてきたが、破壊は進行し続け、さらに拡大している。過去にGDP成長率と破壊の進行率を比較したが、両者の曲線はほぼ一致した。つまり人口増加と経済成長は、森林破壊と表裏一体の関係を持つ。森林破壊の拡大を抑えるには経済成長の抑制が最も効果的だが、それは無理なことだ。
V=森林破壊は必要だと?
M=必要うんぬんを言っているのではない。それが不可避だと言っているのだ。破壊の縮減に努力を集中する以上に、政府と非政府機関は破壊の過程を秩序立てることに注意を注ぐべきだ。破壊の進行率だけに気を取られ、破壊後の状況に目を向けることを忘れてしまっている。森林だけでなく、森林という自然資源を地域経済の持続可能な発展に利用する機会もまた、失われてしまっている。
V=これまで行われてきたような森林保護区の創設はアマゾンの森林保護の向かうべき方向ではないと?
M=そのとおりだ。環境保護運動は保護区の創設だけにこだわっている。森林保護区はアマゾン地方の面積全体の一〇%、インジオ保護区を含めても二六%にすぎない。アマゾンの森林の将来は保護区内だけではなく、保護区外の状況にかかっている。
V=保護区外の地域はどう管理するのですか。
M=それは大きな挑戦だ。しかし、ブラジルは変わりつつある。ここ十五年間で政府の管理能力は向上した。研究機関は充実し、環境保護法は整備され、監視技術はますます高度になっている。だが、こうした能力は森林破壊を回避するためではなく、法を順守し、生態系のバランスを維持しながら森林を開発するためのものだということを理解する必要がある。アマゾンの森林破壊は、なし崩し的に行われていると言われるが、実はそうではない。
V=アマゾンの将来は開発の方向に向かっている? M=個人的にはアマゾンが開発されて欲しくはない。しかし、私のロマンと二十一世紀の現実を混合してはならない。同地域を過去のまま維持することが不可能なことを、研究者として認識せねばならないし、そうした現実を社会が受け入れる手助けをすることが私の責任でもある。
V=大豆栽培の拡大がアマゾンの森林に対する新たな脅威だと言われていますが…。
M=森林破壊の直接の原因だとは確認されていない。一般に大豆生産者はすでに破壊された地域を栽培地として望み、平坦地だけを利用し、他の農作物栽培と違って火を使わないので、大豆栽培は森林破壊の深刻な原因とはなっていない。農薬の使用を減らすなどすれば、生態系の観点からみても牧場よりも環境に及ぶ損害が少ない。
V=百年後の森林はどうなっているでしょうか。
M=アマゾンは現在、重大な局面を迎えている。この三十年間の現実を踏まえると、森林は保護区にしか残らず、同地域が乾燥地帯になっている可能性は高い。もし政府が森林開発を秩序付け、同地域の植生の大部分を維持すれば、湿潤な気候と生物的多様性が維持されるだろう。現在の光景がそのまま続くとは考えられない。