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今年の〃ブラジル丸〃どう舵取り=シェル石油戦略部長予測=国内の充実優先を=激動する政治、経済環境

2003年1月1日(水)

 【ヴェージャ誌】シェル石油の戦略部長ピーター・シュワルツ博士が、二〇〇三年は国際経済が低迷し経済発展が地政学的に動く中、PT新政権はブラジル丸を漕ぎ出すことになると述べている。米州自由貿易圏(FTAA)構想への参加を前にして、ブラジルはできるだけ時間を稼ぎ、国内態勢の充実を図らねばならないとした。現状では、先進国に較べ二十年の遅れをとっていると指摘した。以下に同博士のゼミから要点を紹介する。 
 [ブラジルが直面する国際政治情勢]冷戦の終焉後、世界を襲ったのは世界新秩序だが、それは決してブラジルが期待したものではなかった。また年々新秩序が、次々問題を引き起こすと思われる。
 現在、世界には三大グループが存在する。第一グループは米国だ。これまでのどの帝国も及ばない大帝国で、宇宙の彼方まで支配している。その傲慢さで、世界から嫌われている。世界の規則を勝手につくり、自分は規則を守らない。
 第二のグループはEUやアジア諸国、ラテン・アメリカの一部で、秩序も整い国際規律も順守する。第三がアフリカ諸国の大部分と中近東、ラテン・アメリカの一部など国際規律など、あってないような国。
 米国は、世界を支配しようとしている。政治的にせよ経済的にせよ、米国に逆らうには国連の手を借りねばならない。この三グループ間の摩擦は、年々熾烈化すると思われている。
 [ブラジルが直面する国際経済情勢]ブラジルはグロバリゼーションに沿って大きくチャンスを広げるか、金融危機、政治危機などで社会混乱に巻き込まれるか。政治的には対外的に一定距離を保ち、経済的には世界経済に参加する。
 [世界新秩序の変化]ブラジルが期待しない形の新秩序とは、各国が協約を順守して自由市場が世界レベルで大きく経済成長に貢献するか、地域別に自由市場が発達するかのどっちかだ。いまのところ順調なのはEUだけで、ブラジルを中心とする地域は少し立ち遅れている。
 [米州自由貿易圏(FTAA)]二〇〇五年までFTAA発足の猶予が与えられたが、この合意は米国が順守しないで勝手に変更する。FTAAに対する伯米の見方に米同時テロ事件以来、大きな相違が生じた。
 ブラジルのFTAA参加は、米政府の眼中にない。米国にとって専らの関心事は戦争。伯米間には大きなインフラの違い、規律、労働者の質、国際収支の赤字など面倒な問題がある。ブラジルには、資金援助もしなければならない。
 [二〇〇三年のブラジル産業界への展望]ブラジルの企業が、中国市場へ進出できるかどうかが発展の分水嶺。世界の注目が、いま中国へ集中している。
 しかし、中国には一日一ドル以下で生活する低所得者が九億人いる。また政治は徹底した思想体系と一党独裁だから、外資系企業は中国では儲からないようになっている。儲けるなら、ブラジルの方がマシだ。
 [ブラジルの経済成長]経済成長を願うならシンガポール方式が一番。同国は個人当たり資産が一九六五年に一千五百ドルだったのに、いまは三万ドルへ奇跡的に成長した。ブラジルでは民族性として真似をするのは無理。ブラジルは時間をかけて、まず教育から始めるのがブラジル方式というもの。