12月20日(土)
ユネスコから1991年に世界遺産に指定されたピアウイー州サンライムンド・ノナット市のセーラ・ダ・カピヴァーラ(カピバラ山脈)国立公園が、遺産損壊の危機にさらされている。
同公園の遺産は、考古学者のNiede Guidon氏が創設したアメリカ原人博物館財団(Fumdham)と国立自然環境保護院(Ibama)が共同で管理している。だが、ブラジル政府から保存管理費が回されていないため、Guidon氏は「公園管理任務から降りる」との意思を表明している。
もし、Fumdhamが公園の管理から外れることになれば、Ibamaの3人の職員と外注の6人の従業員のみで10万ヘクタールの同公園を管理せざるを得なくなる。
園内には、約700カ所もの考古学および古生物学の遺跡があり、多数の壁画も見つかっている。また、石器や陶器、人骨、ミイラ、一万年以上前に同地に生息していた巨大動物の骨などもある。Guidon氏は、「天然、文化、科学の3要素を備えた遺産は世界でも珍しい」と語る。
予算不足問題は2001年に始まった。Guidon氏は財団の従業員の給料を支払うために、乗用車を2台も売り払った。従業員らは過去2カ月間にわたってただ働きしていたが、全員辞表を出したという。
Guidon氏は「政府が予算を回さないのなら、ここに保管されている遺産をプラナウト宮にぶちまけて抗議したい。これまでの管理状態をどう維持していけというのか?」と現況に憤っている。
FumdhamはNPO団体で、政府系組織を通して予算を得なければならない。「この公園を維持していくには、月に22万7千レアルが必要だ。文化省や環境省、Ibamaにも予算を頼んだが、ほとんど回ってこない」。
アメリカ大陸の歴史にも、ピアウイー州の遺跡がかかわってくる。これまで、氷河期時代にロシアからアメリカに人類が渡ってきたとされてきたが、実はその逆だった可能性がでてきたのだ。
最近、ロシアのシベリア遺跡の再調査が行なわれ、同地に人類が出現したのが約一万三千年前であることが判明し、これまでの約一万七千年前出現説が覆された。
一方、アメリカ大陸の遺跡は、ニューメキシコで約一万三千六百年前、チリ南部で一万五千年前、アメリカ東部ペンシルバニアで一万六千年前と、ロシアの遺跡より古い。
さらに、多くの科学者がまだ疑問視しているものの、ピアウイー州ペドラ・フラーダ遺跡に三万年前あるいはそれ以上前に人類がいたという驚くべき説もある。―これほど重要な遺跡がブラジルには多数あるのに、政府がそれに気付くのはいつになることやら。
(エスタード・デ・サンパウロ紙11月28日、フォーリャ・デ・サンパウロ紙7月25日)