12月19日(金)
ジャパン・デスク主催の経済セミナー「PTルーラ政権一年目の評価と来年の見通し」が十日午前九時から、市内レストランで開催され、約三十人が熱心に聞き入った。
【政治面の実績】
講師はデロイト・トウシュ・トーマツ監査法人最高顧問の鈴木孝憲さん。冒頭、「左派が政権についても国の体制はまったくグラつかなかったことで、ブラジルの民主主義が定着していることが証明された」と結論付けた。政権開始時のブラジル通貨危機を、前政権の堅実な経済運営を引き継ぐことで回避したが、それは「他に選択肢がなかったため」とした。
【今後の経済展望】
〇三年はブラジル通貨危機対応で調整の一年となった。堅実なマクロ経済運営を今後も続けることで、〇六年までマクロで引き締めながら、経済成長路線に持ち込めるかに焦点が集まっている。
成長すれば、設備投資や雇用も増え、消費も上がる。個人消費、企業設備投資を短期的に増やすには、大幅な金利引下げや時限立法で税金の引き下げなどの〃呼び水〃が必要。また、雇用助成金や税金減額などで、雇用の六〇%を占める中小零細企業の支援をする必要もある。でないと、政府が目指す〇五年の四%、〇六年の四・五%成長が不確実になる。
と同時に、年金や税金の改正をし、構造改革を実現すれば、四~五%の成長も可能になる、とした。
【ビジネス・チャンス】
農牧業や鉱業には潜在力が大きい。農地利用可能な土地の二〇%も使っていないのに、砂糖、トウモロコシ、牛肉、鶏肉など世界一~三位の生産物もある。「中国・アジアの生活水準が上がって消費が増えれば、ブラジルの出番は間違いない」と強調する。
石油は、〇五年には一〇〇%自給が可能視され、天然ガスも世界的な環境問題の高まりの中でクローズアップされている。さらに世界の真水の二〇%がブラジルに集中している点も、日本の二十六倍の土地を持ちながらその大半に水がない中国などとの違い。
外資系企業の動きとしては、これから成長が予想される中南米の中心ブラジルに、グループの収益の柱を構築する戦略が引き続きとられている。国内市場をターゲットにするのみでなく、輸出基地化して、南米全体を狙う戦略になってきている。世界に散らばるグループ全体の収益の二〇%をブラジルで上げているカフェフォールなどがその例。
【むすび】
「日本企業トップに、ブラジル情報が不足している」とし、「欧米企業も同じ投資環境の中で、大規模な投資をしている。日本勢は早急にブラジル戦略を見直してほしい」と訴えた。
日本企業にとって、今なぜブラジルか、の理由は次の三点。(1)中国・アジアに投資が集中し過ぎている。中国に何かあれば止まってしまう。(2)ブラジルは国として安定しており、拡大の可能性が大きい。(3)ブラジルには日系社会があり、アミーゴの国を通り越し、親戚の国とも呼ばれる。日本企業も進出から四十五年が経ち、すでにそれなりのノウハウがある。
そして最後に、「日本勢は自分たちのブラジルへの貢献を全然アピールしてない。官民協力して、ブラジルのエリートたちに日本勢の存在感をもっとアピールした方がいい」と語った。