日系コロニアもすっかり四世や五世が主流を占めるようになり、日本人移民である一世は日に日に減少を余儀なくされている。移民の子らは日の出の勢いで末広がり。後続が途絶えて一世移民の先細りの図式がはっきりと見えてくる。日系人口は百四十万人と膨らんだけれども、一世は商社などに駐在する人々をも含めてもほぼ七万人に過ぎない▼南大河州からアマゾンまでの広大な地域に散在する日系人のうち、日本人が占めるのは移民と駐在員を合わせても五%になるかならないか―なのである。しかも、サントス港への移民船が来なくなってから久しい。若い日本人がいなのだから移民の高齢化は嫌でも目につく。なにしろ、コチア青年と呼ばれ愛されてきた人達が堂々と「古稀の会」を盛大に開き拍手喝采なのである▼短歌や俳句、川柳の世界を楽しむ人々が最も頭を痛めているのも「仲間たちの老齢化」なのである。二世や三世の日系人にも日本独特な表現型式である和歌や連句を好きな人がいるけれども、何といっても数が少ない。とてものほどに「後継歌人」や俳人、川柳人を望むのは難しいと耳にする。日本語による小説や詩にしても、取り囲む厳しい状況は同じであろうと見ていい▼それでも―。文学を好きな人たちの情熱は高まるばかりなのだ。俳句の同人誌は立派にやっており、短歌の「椰子樹」は昭和十三年の創刊ながら、今もってすこぶる元気がいい。先行きは心細いけれども、とにかく今を―の「志」の高さがいい。 (遯)
03/12/13