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ブラジルはまだ帝政時代=ノーベル賞経済学者が分析=発展には契約厳守を

12月4日(木)

 【ヴェージャ誌】ノーベル経済学賞受賞者のダグラス・ノース博士は、ブラジルはポルトガル帝政時代の習慣を今日も引きずっているという。米国は西部劇の時代から、所有権と契約は厳守された。国際競争の勝者となり投資家の信用を得るため、ブラジルも早くこの習慣を体得する必要があると述べた。

 博士の十二月来伯に先立ち、インタービューを試みた。以下は、その一問一答。 【伯米両国の一人当たり所得は一八〇〇年、ほぼ同等だった。それが一九〇〇年には、なぜブラジルは米国の十五分の一になった】 理由は色々ある。その一つは法律。法律を守らない国で、発展した国はない。所有権が曖昧、形式だけの契約や契約不履行が最後はウヤムヤになるなど帝政以来の悪習が今日までまかり通っている。これでは国際投資家は、信用しない。
 司法制度の不備や現実的な法制度が整備されて、はじめてブラジルの経済発展が始まる。米国は西部のならず者が闊歩した時代に、倫理に裏打ちされた完璧な法制度があった。こんな背景が、投資家を安心させ資本投下をさせた。ブラジルや他の中南米諸国は、米国とその点が異なる。
 【中南米は歴史的に規律が曖昧なのは、なぜか】中南米諸国は、経済発展のために天然資源に恵まれ自然条件は備わっていたが、法整備をないがしろにした。
規律の曖昧さが、これらの国を後進国にさせた。
 新大陸の開発時、中南米はポルトガルやスペインのイベリア文化を導入した。両国とも発展には不適切な中世の欠陥法を取り入れた。米国は近代化が進んでいた英国の法制度を導入し、恩恵にとっぷり浸かった。
 【欠陥法を例示すると】 疲弊した植民地から本国への上納金が途絶えても、ポルトガル王朝は堅持した。その代わり人民に重税を課した。国民は苛酷な執政で将来への希望を失った。
 この構造は、中南米では今も変わっていない。英国では同時期、王朝の経費を議会が管理した。公共歳出は、銀行が監査した。この制度は英国で効果があったので、米国でも採用した。
 【英国の旧植民地が、米国のように発展しないのは】 旧植民地の国情にもよるが、インドの場合は法制度だけを導入し、社会構造は取り入れなかった。法制度は完璧なものができたが、社会構造に沿わない変則的な法制度になった。
 米国の場合、植民者と先住民は法制度設置で長い間争った。植民者は強引に英国の法制度を制定して、先住民にも適用した。良否は別として、こんな経緯を経て米国社会は建設された。 多くの血が流されたことは遺憾で褒められないが、英国式社会は築かれた。先住民を一定地域に隔離し、指導者らを処刑して管理した。これは米国史の恥部だが、産業社会の下部構造は出来上がった。
 【米国の発展に宗教や気候、天然資源が寄与したとする説を、どう思うか】
 それは屁理屈だ。これら自身は、発展に何ら寄与しない。米国の開発当初五十年が、あまりに惨めであったことで明白だ。確固とした法制度と社会構造がなければ、極貧と前史的な無秩序は定着してしまう。
 【ブラジルの法制度評価】 契約履行に関する法整備が、無法に近いアフリカよりはまし。ブラジルのアキレス腱は、所得格差と無教育層の存在だ。民主主義と近代政治を行うため、この二つが解決されないと法制度は画餅に過ぎない。
 【経済発展のために政府が採るべき政策への助言】 民間企業育成のために、経済安定のルールを設置するだけだ。それができないのは、有能な財政専門家がいないのだ。試行錯誤の連続。国家財政も会社経営も同じで、指導者が実地に前例をやって見せること。