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ウルグアイ=「日本の家」構想本格化=文化発信拠点として=首都中心部の一等地=2百万ドル捻出が問題

11月27日(木)

 日本とウルグアイ両国の友好を深める起爆剤にしたいと、モンテヴィデオ市内で、日本文化の発信拠点となる「ジャパンハウス」(日本の家)設立の機運が高まっている。同市中心部の一等地にある建物と土地を無償で、三十年間供与するとモンテヴィデオ県がウルグアイ日本大使館に提案。同大使館も前向きに検討を重ねてきた。すでに両国メンバーで構成する「ジャパンハウス委員会」も設立された。ハードルは日本側で捻出する二百万ドル近い改修費用だ。関係者は「何とか実現させて南米日系人の交流の拠点にしたい」と期待を込める。
       
 ■背景
 二〇〇一年に日ウ国交樹立八十周年を機に開園された日本庭園や、共和国大学内の日本語講座など、モンテヴィデオ県では日本文化の関心が高まっていた。親日派で知られるアラーナ県知事は今年四月、外務省の招きで訪日。帰国後に、同市旧市街地の中央市場がある三階建ての建物を無償で提供する、と提案したことから構想が本格化した。
 また、スペインなどの主要国がそれぞれの文化発信施設を有しているため、元駐日大使のラカルテ日ウ文化協会会長が、以前から大使館側に水面下で同構想を持ちかけていたという。
 ラプラタ河に面する一等地にある建物の延べ床面積は約七千平米。ジャパンハウスとして機能すれば、旧市街地活性化の一端となると同県は見込む。
 ■現状
 会員らの寄付で、現会館を購入した日本人会にとっても、建物の老朽化などの問題を抱えている。ただ、百人ほどの会員によって支えられている日本人会だけに、財政的に逼迫。当初は改修費用や維持管理費を捻出できない、と難色を示したが、今年六月の総会では賛同を得た。
 先日、ウルグアイを公式訪問された紀宮さまが、日本人会館をご訪問された際にも、老朽化による問題を懸念する声が上がった。「殿下のご訪問を機に、新会館が必要だと認識した人も多い」とある役員は言う。
 ■展望
 「非常に魅力的な申し出だけに、ぜひ実現できればいい」。大使館で各方面の折衝に当たる中村一博参事官は、積極的な姿勢を見せる。
 今年五月以降、ラカルテ会長やパラシオス・ウ日商工会議所会頭、大野鬼生前日本人会会長、大使館員らが会合を重ねてきた。ジャパンハウス委員会の定款も作成され、登録の手続きを待つ段階だ。
 ただ、県側は、建物と土地の提供に加え修復費の見積もり、設計図作成など人的協力に留まるため、資金捻出が最大の課題となる。
 大使館でも両国政府間の問題ではないため、日本政府からの全面的な資金援助は難しいと認識。「草の根無償援助などで少しずつでも、改装し始めていければ」と中村参事官は、二百万ドルとも言われる改修費に頭を悩ませる。
 ジャパンハウスには、日本人会事務所を始め、市内に一軒もない日本食レストランの開設も検討されている。また、日本語や生け花、折り紙など文化教室だけでなく、剣道や空手、合気道などが出来るスペースも盛り込まれる予定だ。
 南米一の小国ながら、メルコスルの事務局を持つモンテヴィデオ市。二〇〇七年には同国でパンアメリカン日系人大会が予定されていることから、中村参事官は「メルコスル同様、南米日系人がウルグアイを拠点に交流してもいいじゃないですか」と大きな夢を描く。