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考古学遺跡の破壊進む=法律は空文化したまま=学者の増員が急務

11月25日(火)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙】カブラルが新大陸に第一歩を踏み入れた時、すでに何百年も前から現在のブラジルの領土を原住民が支配していた。原住民は文字を持たなかったので、自らの歴史を一切書き残さなかった。それを知るため、考古学者たちは原住民が住んでいた遺跡を調査する。そうした考古学上の遺跡はブラジルで約二万カ所存在する。その多くは資金と人材不足のために保護・管理が行き届かず、道路やダム工事によって破壊されつつある。

 サンパウロ州とサンタ・カタリーナ州の海岸部には六千年前にさかのぼる貝塚遺跡がある。貝塚は当時の人々の生活状況を知る上で重要な情報を提供してくれるが、その多くは破壊され、貝がらは石灰の製造や歩道の敷石、家畜の餌として使われている。ピアウイー州にあるセーラ・ダス・コンフゾンエス国立公園や同州南部の遺跡には絵画遺跡が残っているが、油絵用絵の具で落書きされている。
 そのようにブラジルは先史段階の貴重な情報を手に入れる前に失いつつある。「科学的観点からみると、遺跡は偉大な書物にある言葉のようなものだ。その理解は欠かせない。考古学は好奇心の対象にだけ留まるものではなく、現代社会を理解するカギだ。過去を知らない者は未来への見通しを持てない」とペルナンブッコ連邦大学の考古学者、アウブケルケ氏は考古学遺跡保護の重要性を訴える。
 法的観点からみても、ブラジルは遺跡の重要性を認識しているようだ。一九六一年以降、法令三千九百二十四号により、そうした遺跡は国の遺産であり、特別な保護が必要とされている。八八年憲法第二百十六条でも同じ内容が規定され、〇二年の省令二百三十号は道路工事などの大規模工事を認可する際には、環境への影響に加え、考古学的研究に及ぼす影響を調査することを義務付けている。
 しかし、保護強化を目指した法的措置は二万カ所ある遺跡のうちのたった五カ所にしか事実上適用されていない。考古学遺産の保護を担う、文化省管轄の国立歴史美術遺産院(Iphan)には、全国の遺産保護を担当する考古学者は六人しかいない。
 「もしブラジルがこうした遺産を遺跡巡りや観光に生かせば、観光客を大幅に増やせ、利益も得られる」とアメリカ人類博物館財団の考古学者ギドン氏は話す。同氏は遺跡巡りを推進したフランス、ギリシア、ペルー、メキシコのような国々をブラジルは見習うべきだと考えている。
 ブラジル考古学学会(SAB)のモライス会長は、遺跡がすべて破壊されたのではないとしながらも、ブラジルは考古学遺産を慎重に取り扱い、百五十人ほどしかいない考古学者を増やす必要があると述べた。国立歴史美術遺産院は考古学者の数が少ないことを認め、予算管理省に考古学者の採用増を申請している。