11月20日(木)
【スセッソ誌】脱サラするなら三十歳、遅くて四十歳といわれる。ジョニー・ジョアネス氏は、三十六歳で独立へ踏み切った。それまで手掛けてきた自動車関連の会社を開業したが、思わぬ失敗をした。
同氏はS大学工学部出身、油圧技術を専攻。フォードのセールス・エンジニアとして永年勤続し、産業機器販売のベテランであった。狙ったのは、トラクターの各種油圧機器。資本金もあり、使用人の労務管理も得意であった。開業前から顧客リストも完備、水も漏らさぬ態勢であった。
同氏は失敗の可能性は考えられないほど細部まで検討、計画は完璧だと思えた。新規開業の八〇%は、二年以内に閉業するという。独立した起業家の九〇%は基本的な過ち、資金管理の知識不足でつまずくとされている。同氏はサラリーマン時代、企業の資金繰りなど想像もしなかった。
経営者とサラリーマンは、ライオンとアヒル程違うことをまざまざと知る日がきた。サラリーマンより経営者は、はるかに多岐にわたる大きな問題を抱えることを実感した。とかく技術系は、予算管理や運転資金の出納管理が不得手で積極的に取り組まず、逃げて通ってしまうことが多い。
市場はつねに変化している。市場に合わせ、在庫管理と資金管理をしなければならない。これを怠ると、不渡り手形を出す。売上金は原価と利益からなっている。企業経費は利益の部分から払うのだが、原価の部分も充当すると運転資金が瞬く間に減って行く。
同氏はサラリーマン時代の貯蓄を失い、さらに四万ドルの借金を抱えて閉業した。家族の扶養と借金返済のため職探しを始めた。ゼロからの再出発だ。意志決定は計算の裏付けのもとに行い、勘や経験に頼るのは危険であると悟った。ジョアネスさんは再起を目指し、日蔭の日々を忍んだ。