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コラム 樹海

 今や嫌われものの一番は「たばこ(煙草)」に違いない。十六世紀の終わり頃にポルトガル人によって日本に齎されたものであり「たばこ」もポ語なのである。そう言えば煙管(きせる)もカンボジア語からの借り物であり、そのまま日本語になったのも面白い。火皿と吸い口を繋ぐ竹の管を羅宇(らお)と呼ぶが、これはラオス語。その昔は「羅宇屋」さんが街を流し煙管の修理に汗したものである▼「たばこ」の原産地は南米であり、米国を発見したコロンブスがヨーロッパに持ち込む。これがあれよあれよと言う間に大流行する。老いも若きもがあの白い煙りに溺れてしまい「禁煙令」が何回も出されたけれども、効果のほどは疑わしい。徳川秀忠も禁令を発したがさっぱり守られなかった。トルコの王様は「喫煙者は死刑」の厳罰で臨んだのに効き目の方はゼロに近い▼人の愛煙欲は、これほどに強い。西インド諸島で見つかってからほぼ五百年間に亙って人々は吸い吐いてきたのに近ごろはアメリカに始まって世界中に「禁煙の狼煙」が吹きまくっている。タクシ―で駄目。病院もノー。劇場もお断り。航空機もいけません。家の中でも、非喫煙者への影響があるのでどうしても吸いたい人は屋上へ―となってしまった▼そこへ肺ガンに胃ガンや動脈硬化と脳梗塞の原因と責め立てられては「禁煙」もやむを得ないのかな―と考え込んでしまう。確かに健康にはよくないようだし「吸わない方がいい」と頭では解っていても、仕事終わりに口にくわえる一服の味は―忘れ難く人生の楽しみなのに。 (遯)

03/11/20