11月8日(土)
「ブラジルの多様性を日本は必要としている」――。日本の消費市場動向紹介講演会が七日、サンパウロ中小企業庁(SEBRAE)講堂であった。サンパウロ総領事館、SEBRAE、ブラジル日本商工会議所が共催。講師には、外務省から派遣された商業開発レゾン所長、西川りゅうじん氏が招かれ、サンパウロ輸出企業のための日本市場、日本人の消費動向について熱弁。参加した中小企業主やサンパウロ州工業連盟国際部のブラジル日本部会メンバー、貿易関係者ら約百六十人は、西川氏の話に真剣な表情で聞き入っていた。
講師の西川氏は一九六〇年、神戸市出身。一橋大学経済学部、同法学部を卒業後、マーケティングコンサルタントとして、商品、業態、施設、街おこしなどの企画制作に携わっている。経済産業省ヒューマンメディア委員、経済産業省新エネルギー普及委員などを務めるほか、ビジネスや社会現象についての提言者としてテレビ出演も多数。米国フォーチューン誌では「マーケティングの達人」とも評された。
講演会でははじめに、アレンサール・ブルチSEBRAEサンパウロ支所長、石田仁宏総領事があいさつ。田中信日本ブラジル商工会議所会頭が「日伯経済関係の現状と将来の課題」と題して、(一)一九五〇年代以降、ブラジルに進出した日本企業とその撤退(二)日伯両国間の貿易額の推移――など、両国間の経済基礎知識について解説した。
続いて、西川氏が「日本市場の秩序と進歩」を主題に掲げて講演。まず、GDP世界第二位、常に貿易黒字、会社員一人当たりの年間国民所得が四百五十万円(十一万七千レアル)などの統計をもとに、「日本経済は不況といわれるが、それほど悲観することはない」と一喝した。
西川氏は八〇年代-九〇年代に大激変した株価、九一年に二・一%だった失業率が〇三年には五%を突破など、日本経済全般を憂慮しつつも、日本の国際競争力が二年前の二十一位から今年は十一位に浮上、また、携帯電話の普及率がここ五年間で約二倍の五九・三%に増など、日本経済界に明るい兆しが見え始めていると説明。「日本は、必要なものは全て満たされている。今は、『必要』ではなく、生活を豊かにする『欲求』が求められている」と指摘、「日本には、ブラジルが持つ多様性が必要」と訴えた。
また、日産自動車社長のカルロス・ゴーン氏やサッカー日本代表監督のジーコ氏を例に上げ、「日本語が話せない人でも社長になる時代。ブラジルの優秀な経営者、技術者たちは、どんどん日本に来て欲しい」と呼び掛けた。
西川氏は、変動の激しい世界市場で生き残る方策は「秩序(=不変)と進歩(=変化)」とし、日本で成功する秘訣として、「あ・い・う・え・お」(あ=あそび心、い=いやし、う=うまい、え=えらばれる、お=おもてなし)を打ち出した。
特に、「う」「え」「お」に含まれるセンス、品質、サービスをまとめて「ブランド」といい、「フランスは政府がブランド化委員会を推進して世界中に仏ブランドを確立した。サンパウロでも同様の委員会を一刻でも早く作るべき」と力説。農産物、原材料、工業製品などあらゆる物がブランド化の可能性があるとして、「ブラジル製品が日本で売れないわけがない。ブラジルと日本でチャンピオンを目指そう」と締め括った。