もう少しどうにかならないものか―と思うものに出稼ぎで日本に行ったブラジル人の犯罪の多さがある。いわゆる二世や三世たちの凶行は目に余ると日本人移民の心には映る。確かに文化や言語の相違という衝撃的なことはあるけれども、同じようなことは笠戸丸で海を渡りこの大地に生きてきた一世移民に始まる二十五万の日本人も経験している▼ブラジル語の厚い壁。生活習慣の違い。食べ物も天地ほどに異なる。コロノ暮らしは苦しくも辛い。それでも日本人移民たちは犯罪に走ることはなく、より豊かな生活を求めてカフェーの手入れや収穫に汗して朝星夜星にと頑張り通したのである。教育や学校の問題にしても、日本の移民たちは悩みながらも開拓地に学校を建て子弟に読み書きを教え算数にも力を入れる努力をしている▼こうした日本移民初期の苦悩を背負って生きているのが在日の日系人子弟と見ていい。子を持つ父と母にすれば、ブラジル語の学校がないことに悲観的になるのは決まり切っている。日本人移民とは違って職業が「農業」ではなく工場などで働く「労働者」が多い。このために定住化が薄れがちで学校の建設が難しいの理由もあろう。ならば「塾」のような施設でもいいではないか▼こうしたいろいろな閉塞感が重なっての窃盗や暴力の犯罪とすれば、これほどの不幸はなく哀しい。夜空の次ぎは朝。日系の人達も重く暗い世界から飛び出す知恵を―が老移民の願いなのだ。 (遯)
03/11/01