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北上する大豆栽培前線=熱帯雨林に開拓の手=セラード開発し尽くす=ブラジルの経済危機救う

10月28日(火)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙二十六日】大豆がセラードを席巻したいま、アマゾナス熱帯雨林の一部を含めマット・グロッソ州の保護林に大豆攻勢が始まった。マット・グロッソ州は最も焼き畑の多い州であることが、宇宙衛星によって明らかになっている。大豆王ブライロ・マジ氏はアラグアイア地方のシングー国立公園周辺を開拓しつつある。環境団体の懸念をよそに同氏は、環境保護と経済活性化が両立することを証明して見せると豪語している。

 マジ氏がマット・グロッソ州知事に当選したとき、環境団体関係者は「狐が鶏舎の持ち主になった。鶏の運命はどうなるのか」と懸念した。マット・グロッソ州とアマゾナス熱帯雨林の一部は、同氏の手中に収まったと成り行きを憂慮した。
 同氏は次々森林を買収して施設を建て、前衛基地を建設している。関係官庁や傍系企業を動員して物流のインフラも整備している。
大豆は貿易黒字を生んだばかりでなく国内総生産(GDP)も引き上げ、昨年の経済危機を救った輝かしい救国の勇士だ。
 マット・グロッソ州は大豆輸出の八八%を占め、そのために二千八百万ヘクタールの森林が伐採された。宇宙衛星が九月二十四日、映した映像によれば同州の山焼きは一万六千三百四十件と二位のパラー州の七千六百八十件を大きく引き離し、際立って多い。
 前州知事のオリベイラ氏が制定した森林保護条例は、無視された。現知事が無視したことで、同地方では不法伐採が黙過されるとみている。選挙公約で現知事は州環境局(FEMA)を支配下におくことを公言したので、過去の不法伐採もご破算になると、地主らは考えているようだ。
 マジ氏は、牧場によって荒らされた環境を大豆が保全していると考えている。牧畜家は牛が水を飲めるように川っぷちまで樹木を伐採したので、土壌の侵食を起こし年々土地を痩せらせ砂漠化させた。不法伐採をしても森林局の監督官には、この状態で前地主から購入したと地主らは抗弁する。どんな状態にあったか、監督官は知らないし何ら証拠もないのだ。
 アラグァイア川流域のクェレンシア地方には大豆王のマジ氏と綿花王でアクレウナ市長のソウザ氏が控えている。クェレンシア郡はセルジッペ州と同面積で、樹木は細く伐採は容易で根も浅く開墾は手間がかからない。土地価格は昨年三月、ヘクタール当たり三百レアルであった。現在は二千五百レアルに暴騰し、もう売り手はいない。
大豆生産者らは、生産資材を為替が一ドル=一・九〇レアルのとき購入し、生産物は三・八〇レアルで受け取ったので運が良かった。生産者らは、我先に土地の確保へ走った。マジ氏は、州知事にも当選した。