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来伯のトフラー、未来語る=警察国家の到来予測=デジカメが市民を監視

10月23日(木)

 【ヴェージャ誌】「未来の衝撃」「第三の波」の著者アルヴィン・トフラー氏はコンピュータやケーブル・テレビの普及を予測して見事的中した。自動車整備工から身を起こし出版事業や政府顧問として活躍。ゼミ講師として来伯中、ヴェージャ誌のインタービューに応じてくれた。

 
 次は、その一問一答。
 【九・一一同時テロへの見解は】確かに時代を変えた。しかし、予期はできた。テロの出現と影響は、三十年前に警告した。ゆがんだ文明の発展が生む結果としてテロに触れたが、誰も真面目に聞いてくれなかった。私が予測したのはコンピュータで作動する爆弾を仕掛けたテロで、飛行機で突っ込むテロではなかった。
 IT・テロでない代わり、テロは恒常化する。テロ対策によって経済活動や社会運動が刺激される反面、犯罪と暴力も並行して増長する。技術の進歩は、兵器の近代化にも貢献する。
 憂慮すべきことは大量破壊兵器の出現ではなく、安価で操作が容易な兵器の出現だ。近代兵器が最近、容易に入手できる。反体制派の入手だけでなく、精神異常者が入手することにも注意する必要がある。
 【テロはこれから】テロは、米国だけの問題ではなくなる。テロ防止を理由に一般市民が、私生活まで厳しく監視される。自由は制限される。これはテロを逆用した市民監視作戦だ。一体テロとは、何であったのか考えさせられる。
 【市民監視とは】デジタル・カメラを使う。デジカメはコスト・ダウンされ、超高性能で広角となり遠距離まで解読が可能だ。これが全ての信号に取り付けられる。都市を歩いた人は、必ずどこかの信号でキャッチされる。恐ろしいデジカメ監視社会の到来だ。
 【警察国家になるのか】ズバリ、そのものだ。ジョージ・オーウェルが一九四〇年に書いたSF小説が現実となる。懸念されるのは、それだけではない。政府機関がマーケティングと称して、市民の日常会話も盗聴できるようになる。デジカメが、読唇するからだ。
 【私たちは知らない間に監視されるのか】商店は至るところにデジカメを設置し、顧客の会話を盗聴し販売促進を行う。同じように政府は反政府分子を、警察は犯罪人を未然にチェックする。政府や官憲当局の監視機能が住民基本台帳システムとオンラインで接続される。住民基本台帳は、そのための布石だった。
 【外れた予測は】使い捨て時代の到来。物、考え、人、友人の使い捨てが一時、流行したが短期間に廃れた。ほかにクローン動物、クローン人間の出現。これは外れたというより、出現に時間がかかるだけだ。
 【技術の進歩で劇的変化するのは】農業。心配された食糧危機は遺伝子組み換え(GM)技術で回避された。農業は量産から、品種改良へ移った。GMは第一世代の品種改良から、第二世代の健康増進GM、第三世代の薬用食品GMへと、果てしなく進んで行く。
 【GM食品が抵抗を受けるのは】飢餓撲滅と貧困対策を旗印としたNGOが、飢餓を解決したGMを目の仇にするのは皮肉だ。EUのNGOはアフリカの途上国から輸出されるGM農産物をボイコットして、極貧国の首を締めている。すでに十数億の人々がGM食品を食べているが、健康を損ねたという報告はない。
 【家庭や家族の変化とは】新技術は、派生技術とセットで開発される。社会変革を起こし、政治を改革し文化を変える。一般市民の生活スタイルが変わる。IT(情報技術)の普及により肉体労働が頭脳労働に変化する。男性の仕事が、女性の仕事になる。女性の社会的地位が向上する。女性は直感力で男性より秀でるので、ITでは女性の方が有利だからだ。
 女性が世帯主となり、男性が育児に励むこともある。従来の生活スタイルは、工業労働者や肉体労働者のものだ。女性に才能があれば、社会進出のチャンスは多い。女性が家で炊事や洗濯、育児をする時代は終わった。
 【その他の変化は】夫使い捨て時代の到来。家族の扶養能力がなければ、男性は粗大ゴミに過ぎない。結婚、家庭、夫婦愛の概念が変わる。父子や母子家庭が増える。五、六回目の再婚や同性結婚は珍しくなくなる。子供の教育を憂慮する。時代とは非情なものだ。