10月21日(火)
ブラジルを知る会(清水裕美代表)主催の第十四回講演会「耳をすまして聞いてごらん」が九日、国際交流基金一階多目的ホール(パウリスタ通り三七)で約六十人を集めて開かれた。講師はJICA「平和のための子ども時代」プロジェクト健康教育専門家、小貫大輔氏。十五年前、ボランティアで携わったモンテ・アズール貧民街での体験や、現在の初期の子ども時代(〇~六歳)に関する保健教育活動など、スライドを交えながら熱く語った。
講演のテーマは、モ・アズール貧民街から生まれた「子ども時代」運動。小貫氏は同貧民街で八八年から五年間、ドイツのシュタイナー思想のもと「モ・アズール住民協会」活動に参加した。日本に帰国後、CRI(チルドレンズ・リソース・インターナショナル)を創設、性教育や健康教育の専門家として自然分娩、育児などに関する啓蒙活動を続けてきた。現在はブラジルのJICA専門家として活動している。
講演会では最初にモ・アズールを例にあげ、貧民街が生まれる過程を説明した後、保健衛生、経済面での問題点を述べた。水道が入らないと子どもの死亡率が高くなるが、モ・アズールでは水道敷設やドブ川整備で住民が一致団結、自ら地域環境を改善したことを評価した。また、「貧民街の経済は女性が働けるかどうかに関わる」とし、子どもを託すことができ、なおかつ、家庭的で信頼のおける保育園の必要性を訴えた。
後半は現在行なっている子ども時代の改善に関する活動について講演。「ブラジルでは八歳ごろ、家庭を見限った子どもが路上生活を始める。ある統計では、約五〇%が最初の一年で死亡するらしい」とし、〇~六歳の子どもとの愛情ある接触の大切さを説いた。
小貫さんは、(一)自然分娩で新生児にホルモン供給(二)母乳を一生懸命に飲むことで子どもが意志の力を持つ(三)赤ちゃんは触れられることで生きる価値を見付ける――など初期の子どもの特徴を解説。「家庭の子育て、保育園での子育て、一つ一つに焦点を当てなければ」とし、「子どもを叩くのはよくないと理解し、叩く代わりになるものを考える」「着替える時は話し掛けながら」など助言した。