10月16日(木)
【ヴェージャ誌】中米のツアーリ(皇帝)と呼ばれるメキシコ人実業家カルロス・スリム氏(六三)が市場視察のため来伯した。英語が話せなくても米国で商売はできるとし、裸一貫でスリム王国を築いた立身出世の秘けつを、同氏に一問一答した。
【財を築く秘けつは】チャンスをとらえるだけで、秘けつなどはない。生家はメキシコ・シティに小さな食料品店を持ち、八歳から店番をさせられたので、時代の流れや物事の動きには敏感であった。人は好きな分野で働くと、不思議な才能を発揮するもの。秘けつは忍耐と楽観主義だけ。
メキシコは前世紀から農業国から工業国へ変ぼうし、工業は通信、情報、知識など新分野を生み出した。時代の変遷の中に生きる人には、つねに成功のチャンスがほほ笑むものだ。
【変遷の中に語学やITも含まれるのか】それは必須条件ではない。何をするかで仕事の必須条件は異なる。貿易をするなら、英語は必須。ただし英語ができないと、商売ができないわけではない。
【なぜ中南米に経済危機が多い】ブラジルとメキシコは国情が似ているが、周辺諸国はそれぞれ異なるので、単一の処方せんは困難。ただ中南米に突出した大国がないから、外資に頼ると経済危機を招き易い。
【なぜ中南米地域は発展が遅いか】国民性や習慣、宗教よりも慢性的な資金不足で教育や住宅、公衆衛生など社会インフラに満足な投資ができないことが原因だ。民間の活力を育成して公共工事に参加させ、民間資本も用いることが必要。外資はインフラ整備に投入し雇用創出に努力すれば、もっと発展するはずだ。
【中南米と米国のビジネス環境は】米国はチャンスが豊かだ。動く金額が大きいし、仕事が能率的で公務員はよく働く。中南米は労働意欲を起こさせる環境造りと社会発展のための投資をもっと奨励すべきだ。
【携帯電話BCPに続く投資計画は】まずBCPグループ企業への増資を行う。ハイテク産業は技術革新に伴い、絶えず増資が必要だ。電子通信事業は、長期にわたり再々増資が必要なイライラさせる金食い産業だ。
ブラジルの将来性を信じ、未来整備のためにばく大な投資は覚悟をしている。電子通信はつねに技術革新が行われ、最高水準のサービスを保持するため投資額の限度が設定できない。
増資のため常に運転資金を工面するうえ、技術の進歩による通信料金の低減傾向という矛盾を克服しなければならない。電子通信はとてつもない長期投資なので、投資先政府の政治にも精通する必要がある。
【ブラジルの将来性について】ブラジルには、すでに四十年滞在した。マクロ経済は大体安定したが、金利政策がいまいち。年金改革も上々。不足しているのは恒常的な経済発展の土壌を整備すること。
【北米自由貿易協定(NAFTA)から米州自由貿易地域(FTAA)協定への助言】NAFTAでメキシコは米国向け輸出が、一次産品から二次産品へ代わった。だが欧米協定に比較して、融資奨励策が欠け雇用創出につながらなかった。