10月7日(火)
【ヴェージャ誌】政府は「家族支援金」という新たな社会支援策をはじめ、多くの税金を社会分野に投入していると言われる。しかし、このほど財務省が社会費用の配分を分析した結果、そうした社会支援の構造自体に深刻な問題があることが浮かび上がった。
政府は新しい社会政策―「家族支援金」を計画した。この計画は貧困家庭の食糧購入や教育を支援する四つの既存の計画を統合したもので、それにより政府は社会保護を拡大し、月収が百レアルに満たない千百四十万世帯すべてへの支援を目指す。同計画では五〇から九十五レアルが現金で貧困家庭に支給される
「家族支援金」は重要な第一歩だが、あいにくブラジルの社会問題の核心―税金の行き先―に迫るにはまだ程遠い。
社会分野にブラジルは多くの税金を使っているとよくいわれるが、使い方が悪い。一般的に税金の徴収と分配の過程で、多額の税金が官僚主義的手続き、横流し、汚職によって途中でなくなると推測されている。
だが実際、ブラジルの社会支援制度においては分配の過程以前に、ばく大な資金を富裕層に、わずかな金を最貧困層に振り分けるという構造自体に深刻な問題がある。
大統領府の要請で財務省は社会費用分配の構造的欠陥を解明する作業を行った。エコノミストのリスボーア氏とシケイラ氏は〇一年と〇二年に社会分野に投入された費用を四十三ページに及ぶ研究報告書の中で分析した。
同報告書は、社会予算は二年間で一人当たり千レアルから二千レアルへと、二〇%も増加したが、巨額の資金は間違った方向、貧しい人々にではなく裕福な人々に向けられたと指摘している。たとえ横流しが一切なかったとしても、ブラジルは貧困者にたいしてほとんど何もしなかったことになる。
イギリスでは富裕層の上位二〇%が最貧困層の下位二〇%の十九倍の所得を得ている。ブラジルでは同じ比較で十七倍だ。つまり所得格差はブラジルよりイギリスの方が大きい。しかし、イギリス政府は税金を貧困層に多く、富裕層には少なく使っている。それによって十九倍の格差は八倍にまで縮小される。ブラジル政府は十七倍の格差を十五倍にしか縮小していない。
また、イギリスでは富裕層の上位一〇%が政府に払った税金の九五%が社会費用となって残り九〇%の層に移転するが、ブラジルでは四〇%しか移転しない。
社会費用の使い方の過ちは社会的不平等を減らすのとは逆にそれを拡大する結果を生み出している。なぜなら、イギリス、ブラジル両国ともばく大な社会費用を年金支給に使っているからだ。ブラジルでは年金予算の四〇%が上位一〇%の富裕層に対して使われ、下位一〇%の貧困層にはたった一%しか使われていない。教育分野でも同じような現象が見られ、教育予算の七〇%が富裕層に向けられている。
こうした所得分配構造を抜本的に変えないかぎり、所得格差は縮小しない。社会政策におけるルーラ大統領の挑戦はそこにある。