10月7日(火)
社会福祉法人APAE(障害者父母友の会)は、六一年にリオ州で、障害児を持つ四家族の父母によって設立された。その後、七六年に、サンパウロでもAPAEサンパウロがつくられ、現在では障害者福祉施設として全国に広がる。一日、ヴィラ・クレメンチーノ区にあるAPAEの現場を見た。
「APAEは現在大変苦しい状況にある。日系社会からの支援もお願いしたい」。ボランティア指導員のマリア・リージアさんはそう求めた。
ヴィラ・クレメンチーノ区のAPAEは、利用者千五百四十六人、職員数四百人、ボランティア約三百四十人で運営する。生後三カ月から、成人男性までの知的障害者が主な利用者。滞在施設はなく、通所が中心になる。
白地に青い横線が入った、色鮮やかな建物―。施設は、瀟洒なマンションを思わせる作りだ。内装も、清潔感があふれており、管理が行き届いていることを実感する。
「ここはブラジルでも最高の設備を誇る。プロジェクトなども進行し、全国の教育センターにもなっている」とは、前出のマリアさん。施設内には、乳児の知的障害判定検査所から診療所はもちろん、四歳から十六歳までの障害児学校、成人のための授産施設がある。訪れた日には、授産施設で自転車の車輪を製造していた。
注目すべきは、付き添いで訪れた、父母のための施設。ボランティアが、手芸やヨガ、ピアノなどを父母に講義し、気分転換を図っている。
「ここでは、幼児から成人に至るまで面倒をみる。しかし、最近はなるべく社会進出させる方針に変えている」と変化が見られる。昨年は二百五十人の利用者を、社会に送り出した。一年間は、APAEが研修生として派遣しながら面倒を見る。
「研修生時は最低賃金だが、採用となれば正社員なみの給料を受け取れる。工場のライン作業などは、健常者よりも優れている場合もある」とマリアさんは明かす。
あるボランティアによると「利用費用は月額約五百レアルだが、全額を支払っているのは一人。一部を支払っているものが三〇%で、七〇%が未納入」と苦々しげ。昨年度に、経費削減のため、二五%の正職員を減らした。一方で、「授産施設で働く、子どもの収入が家計を支えている場合が殆ど」と家族の内情は厳しい。
APAEはサンパウロ州からの補助金、企業からの寄付金とバザーが収入源。二五%の収入を支えていた、乳幼児の知的障害児判定の検査が減少。州内でも七カ所の、施設で検査が可能になったことが背景にある。
転換点を迎えたAPAE―。日系社会からの支援が求められている。