9月17日(水)
「第五十五回全伯短歌大会」が十四日午前九時からエスペランサ婦人会サロンで行われた。椰子樹社(清谷益次代表)、ニッケイ新聞社(高木ラウル社長)が主催。遠くはリオデジャネイロ州、パラナ州からも参加、六十二人(初参加者二人)が五つの部門で短歌を競った。八十九歳の井垣節さんを筆頭に、七〇代前後の参加者が目立った。
大会は、清谷代表の開会の言葉に続いて、新聞社から中野光雄顧問があいさつ。「半世紀を越える今大会は、海外日系社会でも例を見ない立派な業績です。本日は和気あいあいの内に良い作品がたくさん出来ることを期待します」と呼びかけた。
ロンドリーナ市から駆け付けた島田晋さんは短歌歴五十年のベテラン。「二十年以上この大会に参加している。短歌をすると友人がたくさんできる」と魅力を語る。「記録に残ること、その人だけの唯一のものである事が短歌の魅力だろう」とは司会の多田邦治さん。いずれにしても、短歌をひねる姿は真剣そのものだった。
最優秀短歌は以下の通り。
―新聞社出題「足跡」―
ほこらかな足跡残す事もなくこれの大地に住み古りてゆく 上妻泰子
―代表選高点歌―
在りし日の夫の座なりし椅子のうえ彼の日々のごと朝陽射しくる 岡本喜代子
―互選高点歌―
貧しくも農の醍醐味しみじみと背にやわらかし春の陽射しは 瀬尾天村
―独楽吟―
秋風に草穂のなびく野べを行く夫のマフラの色のさやけさ 古山孝子
―アベック競詠―
活き活きと立ち振るまいし日は遠く難聴難視の老いの寂しさ
陣内しのぶ・岡本利一
―総合点―
一位、斉藤光之。二位、瀬尾天村。三位、藤田朝日子。敬称略。