WTO閣僚会議 ブラジルの発言力増大=22カ国同盟をリード=農業補助廃止を主張
9月16日(火)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十五日】貿易自由化の進展を目指しメキシコのカンクンで開かれた世界貿易機関(WTO)閣僚会議は十四日、ブラジルを中心とする途上国G22と日米EUによる対立が最後まで解けず、最大の焦点だった農業分野でも調整が付かず決裂した。失敗に終わった最大の原因は、これまで自由化交渉の成果を先進国が独占し、途上国は十分な恩恵が受けられなかったという不信感が最後まで払しょくされなかったこととされる。(関連一面)
二〇〇四年末を妥結期限としている新多角的貿易交渉(新ラウンド)の日程に大きな遅れが出ることは避けられない情勢となった。同会議は開幕前から交渉の土台となる文案をめぐり、ブラジルをはじめとする途上国と米EU連合が激しく入り口からもつれ、波乱のスタートとなった。
ゼーリック米通商代表は、二〇〇四年十二月までに保留問題を解決せねばならないが、カンクン以後さらに交渉難航が予想されるとみた。多国間交渉から米州自由貿易地域(FTAA)など二国間交渉に軸足を移す可能性を示唆した。
アモリン外相は決裂ではなく、不成功だと述べた。しかし、ブラジルが組織した途上国G21連合は存在を鮮明に印象付けたと評価した。カンクン会議以前より会議後は、国際舞台でのブラジルの発言力が見直されるようになるという。
G21連合はエルサルバドルの離脱があったが、インドネシアとナイジェリアが加入してG22となった。WTOを舞台にした新ラウンドの成否は、存在感を増した途上国を強く意識した戦略の練り直しが求められ、WTO体制の〃もろさ〃も露呈した。
委員長を務めたメキシコのデルベス外相は、会議が当初から白けた雰囲気の中で始まり歩み寄りの気配がないことで、これ以上の会議継続は無意味として退場する一幕もあった。十四日の非公式交渉も平行して行われ米EUの譲歩を迫った。EUはどう喝的圧力をかけてきたことで、担当官は対決姿勢を崩さなかった。
デルベス委員長の指示で十四日朝、作成した宣言文の中で農産物の項は補助金の段階的廃止となっていたことで、G22連合は容認の心算でいた。アモリン外相が本会議場に入った午後四時、G22のメンバーから農産物の項が宣言文から削除されたと聞かされた。
アモリン外相は、ブラジルが主張する農産物補助金制度の撤廃はWTO仲介が困難であることで、米メルコスル間の4プラス1協定の締結に専心する決意を固めたようだ。ゼーリック米代表も、FTAAの枠内交渉を容認した。
農産物の完全自由化は、WTOの枠内ではなくグローバルな世界的枠組みの中で議論されるべき問題であると、外相は認識した。カンクン閣僚会議は途上国の存在示威であり、FTAAも同様にあしらわれることはないと強調した。
4プラス1協定は南北アメリカ大陸に限ったもので共存可能なことと、外相はみている。同協定は、農業国のカナダも参加可能なものとしている。さらに同協定は、農産物で伯米同盟を結べる可能性もある。