9月16日(火)
【ジアーリオ・デ・サンパウロ紙】年老いた両親を家で世話するかしないかという問題は解決困難な問題だ。両親を病院や施設に入れることを一度も考えなかった息子・娘も介護が負担になればなるほど、それを考えざるをえなくなる。とにかく、欠かせないのは愛情に満ちた援助で、老人医学専門医は話すー「家族の役割は最も重要だ。高齢者は優しさと気遣いを必要としている」と。
「施設には両親を絶対預けないよ。年を取ると人の助けが最も必要になる。両親の面倒を見ない子どもの言い訳はただその気がないっていうことさ」(三十三歳・男性、クリーニング店勤務)「もちろん両親の面倒を見るわ。条件がどうしてもそろわない時以外は世話をすると思う。施設に預けるなんて絶対イヤ。だれか世話をする人を雇う方がましでしょう」(二一歳・女性、電話オペレーター)「ほかに方法がなくて、きちんとした施設なら両親を預けるでしょうね。施設が牢獄だという偏見は持っていない。そこでは同じ仲間と協力し合って生活するだろうから」(三二歳・学生)「そんなこと考えたくもない」(十四歳・男子)―。これらは「あなたは年取った両親を老人養護施設に預けますか」という質問に街角で答えたブラジル人の言葉だ。
しかし、施設で生活する老人の多くは家族の決断の結果、そこに入所することになった。周りの人間は入所を選択した家族を責めるが、それは生半可な決断ではなく、家族自身も決断に非常に苦しみ、自身への責めを深く感じている。老人養護施設のマーチンス社会福祉員は施設の老人のほとんどが家庭で世話ができないから入所すると話す。「息子たちは一日中仕事で、よく知らない人間に家で両親を世話してもらうことに不安を感じる。彼らは両親に仲間ができることに加え、専門家が世話をする施設を好む。また息子自身がすでに高齢で、両親を世話できない場合も施設が選ばれる」。
多くの人は老いに対する準備ができておらず、それを考えることすら嫌がる。老人医学が専門のジャシント医師によると、老いへの恐れが老いに向き合っていくことの難しさとつながる。「人は少しずつ老いてゆくが、普段は気にも留めない。しかし、何か深刻な問題が表れだした時に初めて老いについて考え、うつ病に陥ってしまう」。
同医師によると、高齢者に多い病気はうつ病、むら気や、アルツハイマーなどの退行性の病気で、症状が進行すると、食べるといった基本的なことさえできなくなる。むら気とうつ病は死と残り少ない人生に関係する。高齢者のうつ病に決まった型はなく、病気の徴候は悲しみに落ち込むのとは違って、すべてに八つ当たりする強情な態度に表れることがある。その時、老人には限界があることを家族が理解する必要がある。老人は子どもに戻っていくようなもので、愛情と気遣いを必要としていると。
高齢者も若かったときがあり、みんな将来高齢者になることを心に留めておくことが大切だと同医師は話す。「あいにくブラジル人は高齢者を尊敬しないが、そうした態度は変えなければならない。というのはブラジル人の平均寿命は伸び続け、高齢化がますます進んでいるからだ」。
ブラジルが若い国であるというのは過去の話しで、現在高齢化が加速的に進行している。ブラジル地理統計院(IBGE)の調査結果によると、二〇〇〇年の人口は一億四千五百万人で、六十歳を超える高齢者は全体の八・六%だったが、三年後の現在は一〇%に上昇している。高齢化が進んでいるのはブラジルだけでなく、国連の推計によると、二〇五〇年には世界中で五人に一人が六十歳以上となり、百歳を超える高齢者の数は約十五倍に増える。