9月12日(金)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十一日】世界貿易機関(WTO)カンクン閣僚会議の委員長を務めるメキシコのルイス・E・デルベス外相は十日、米EU代表が提案した宣言文を起用しないと決定した。これで懸念された農産物の基本的な三問題、国際市場への導入、補助金問題、保護制度の適用などを、忌憚(きたん)なく討議できることになった。ブラジル代表団は、捨て身の交渉成果をまずは祝った。
アモリン外相は十日夜、第一回戦の成果に祝杯を挙げた。米EU代表団によって棚上げが危ぐされた農産物問題を、俎上(そじょう)に載せることに成功した。問題は国際市場への農産物導入制度、輸出農産物への補助金制度、農業生産者保護制度の適用の三点。新多角的貿易交渉(新ラウンド)議長国ウルグアイのカスチージョ大使(議長)によって八月、カンクン会議の議題から外されていた。
米国通商代表部(USTR)のゼーリック代表は九日、WTO事務局長も支持する米EU起草案の会議での起用を要求した。内容は極めて、ブラジルにとって不利なものであった。
委員長のデルベス・メキシコ外相は開会式で、農業部会長のイェオ・シンガポール大使を指名し農業問題を最重要議題として提案させた。最も複雑に各国の利害が絡み合う同議題を、この機会に解決に向けて妥協案を見い出すことを、同大使が提議した。
デルベス委員長は会議に先立ち、アモリン外相も含め途上国代表を訪ねた。米EU案の起用もないが途上国の勝利を保証することもないし、途上国に不利な外交戦を強いることもないと、同委員長は通告した。
却下された米EU案では、一部製品の輸出に対して補助金制度を適用しないとする内容であったが、あいまいな表現で伯亜産の農産物を狙い撃ちにしているとみられている。
米EU代表団は急きょ、アフリカやアジア、南米諸国代表団を訪ねどう喝外交を展開し、途上国二十一カ国連合に合流しないように圧力をかけた。米EU代表団は争点の補助金制度は、補助金額が問題ではなく国際貿易への影響がネックなのだから是正の余地はあるという。米EU起草の宣言文は、農業関係を除いて起用されるべきだとした。
開会式ではブラジルを代表して、リクペロ国連大使が式辞を述べた。途上国発展の障害となっている、農産物補助金制度の廃止を支持する国連のアナン事務総長の言葉を称賛した。
カンクン会議場周辺は、グロバリゼーションに反対するデモで混乱した。しかし、抗議デモは農産物の補助金廃止に反対する韓国農民リー・クアン・ハイさんの自殺で様子が一変した。補助金制度の廃止は、農民を死へ追いやるというのだ。補助金制度でふやけてしまった〃モヤシ農民〃が食糧政策の課題になりそうだ。