9月11日(木)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十日】世界貿易機関(WTO)第五回閣僚会議は十日、メキシコのカンクンで米欧を中心とする先進国陣営と途上国二十カ国陣営の間で、農産物を最大の争点として攻防戦が繰り広げられる。ワシントンで行われた準備会議は、同問題で両陣営が決裂したまま本会議へもつれ込んだ。農産物補助金制度は先進国にとって安全保障の本丸であり、途上国にとっては生き残りのための障壁となっている。
途上国二十カ国連合は、エジプトの参加で二十一カ国となった。先進国は一日当たり十億ドルの補助金制度を設け、途上国産業の生命線とする農産物に〃とどめ〃を刺している。WTOカンクン閣僚会議の主要議題から農産物を外そうとする先進諸国に対し、途上国連合は最重要議題として執拗に食い下がった。
農産物問題は、両陣営にとって譲れない課題だ。先進諸国にとって補助金制度の廃止は農業の衰退であり、国家戦略上の基本的問題とされている。ブラジルを中心とする途上国連合にとっては、飢餓線上にある底辺国民の生死をかけた問題となっている。
カンクン閣僚会議は国際政治が内蔵する矛盾が露呈し、先進諸国と途上国が一気にぶつかりあう場になりそうだ。米欧の共同提案を土台に策定された閣僚宣言案を、議長国ウルグアイのカスチージョ代表が提示した。それは農産物を除く一般製品を交渉の対象とする提案で、ブラジル案を無視した内容であった。
これまで国際会議は途上国の提案をソデにしてきたが、今回の閣僚会議は双方が決着を付ける機会になると、アモリン外相は述べた。ブラジル案は八月の準備会議で十五カ国から支持され、さらに二十カ国に膨れ、九日に二十一カ国となった。この数は、世界農業人口の六五%を占める。
カンクン閣僚会議宣言文はパニチャパックWTO事務総長も認証し、すでに公文化しているので、ブラジルをはじめ二十一カ国が何をいおうと宣言書を二つ作る必要はないと、ゼーリック米代表は強弁した。
カスチージョ議長は、米欧案を代弁して途上国と競合するものに限り、補助金を排除すると述べた。しかし、どの製品か詳細については米欧代表は一切触れなかった。フィッシュラーEU農業担当委員は、途上国が二重のWTO規定を作り国際貿易を二重構造にするつもりだと非難した。
ニューヨーク・タイムスは農産物補助金制度について、次のように述べた。この制度は、第二次大戦直後の食糧枯渇時に設定された。現在は食糧があり余り、農業生産者のお小遣いや政治に利用されている。しかし制度を廃止するには、米大統領選後でないと難しいだろうとみている。