9月9日(火)
【エスタード・デ・サンパウロ紙七日】アマゾナス州タバチンガ市とレチシア市は隣接している都市でタバチシアと呼ぶ人口三万人の町。中心街の本通りは、隣国コロンビアと接する。両市のコロンビア側は革命軍(FARC)が優勢な地域で、FARCの兵士やコカイン密売業者が何ら検閲を受けず、目と鼻の先を自由にかっ歩している。
コロンビアの革命前線は六〇年代、ブラジル国境まで現れることはなかった。コカインの栽培人や精製業者、精製副原料の供給者などが最近、兵士の護衛のもとにタバチンガ市とレチシア市へたびたび出没している。それに伴いブラジル側の業者も製品や半製品の購入でひんぱんに、両市を訪れるようになった。
両市でFARC幹部は同市最高級のホテル・タナカに宿泊し、ポテト・チップなどを町角で売ったり、食料の仕入れをしながらスパイ活動を行っている。目付きの鋭い人が多くなり、市民は誰かに監視されている気分だ。ブラジル人が胸で十字を切ったら、FARCが近くにいることを知らせるサインなのだ。
タバチシアのタクシーは全てオートバイ・タクシー。一回の使用料は一レアルで、両国を往来している。二百台が市中心部に待機し、コカイン副原料の運搬も行う。タクシー組合が三つあって、賃貸する。タクシーの運転手の収入は一日平均で四十から五十レアル。
コロンビア領内で政府軍とFARCの衝突が起きると、同地域のコロンビア政府公務員は全員失職する。元公務員の失業者が同町にあふれ、バールでたむろしながら一杯のコーヒーで一日をつぶしている。
同市はかつて、ゴムやカカオで栄えたが、いまは産業がない。市民はコカイン関連の仕事と金採掘、木材の伐採、観光で生活している。殺人や強盗などの大事件はない。警察は、コロンビア側が忙しいだけ。
コロンビア領内ではFARCとの衝突ニュースは珍しくないが、ツアーの観光客は全然気に止めず次々やって来る。コロンビアと反対側のペルー領内には風光明美なアマカジャク国立公園があるからだ。雇用創出と貧困対策で一番期待されているのは、観光客だ。