バーミャンにあった世界最大の大仏立像が砲弾や爆薬で破壊されてしまった記憶は新しい。岸壁に彫られた大仏二体は像高が三八メートルと五五メートルと大きい。あの三蔵法師も観仏しているし多くの仏教徒が参ったに違いない。この世界的な文化遺産を破滅に追いやったのはイスラム原理主義のカタリバンだが、二世紀から六世紀に造られたとされる遺跡の惨状は想像を超えるものらしい▼アフガンのバーミャンは「文明の十字路」と呼ばれ紀元前から栄えた地でありアレクサンダー大王に支配されたこともある歴史の豊かな大地でもある。ガンダーラ美術の影響を受けたあの巨大な仏像も、そんな多彩な歴史を物語る一つ。偶像崇拝を拒否するイスラムによって無残にも破滅してしまったけれども、日本とユネスコが手を握って先月から、遺跡の復興が始まったのは心強い▼あの大仏像を復元しようの動きもあるそうだが、彼の地をよく知る平山郁夫・東京芸大学長は「負の遺産」として現状のまま残すべきだと反対しているらしい。地元の人々は復元派。あの地域をきちんと整備して大観光を目論んでいる。遺跡復興の日本隊を率いる前田耕作・和光大学教授は「一体は復元しても」の意見なのだが―▼尤も、前田教授にはもっと壮大な夢がある。あの地は、まだ完全に調査されたわけではない。地下や岩場には未だ見つかっていない仏像があるかもしれない。前田教授は語る。「未発見の巨大な涅槃仏が眠る場所を見つけたい」と、秋には地下探査も実施するという。壊された遺跡の修復も大切ながらもし和田教授の「涅槃仏」が見つかれば、これは大発見に違いない。バーミャンにはまだまだ「謎」が多すぎるほどに多い。 (遯)
03/08/30