8月26日(火)
【フォーリャ・デ・サンパウロ紙】サンパウロ市内のビルと家屋の壁やバスに落書きする犯人は、サンパウロ市役所青年課によると五千人、落書き犯自身によると五万人とされる。以前、落書き犯はサンパウロ市周辺地域の貧しい若者に限られていたが、最近は中流階層の若者の間にも広がり始めた。ブラジル・マンション保全協会のケイロス副会長が不動産会社と行った調査によると、落書きが及ぼす損害総額は八十億レアルに上るとみられ、現在のサンパウロ市の予算(百十四億レアル)にほぼ匹敵する。
落書き犯はサンパウロ市中央部から離れた地区に住む十五歳から二十五歳の若者で構成される。彼らはモトボーイを主に生業とし、ほとんどが学校を中退している。ナップサックに六レアルで買ったスプレー缶を入れ、獲物を探し歩く。ますます大胆になった落書き犯は、はしごだけでなく、建設現場で使用される足場を使ったり、いすを建物の壁面につるしたりし始めたという。
組織化されてはいないが、落書き犯たちは毎週火曜日の夜にサンパウロ文化センターの前に集まり、ビールを飲み、大麻を吸い、フォフォを聞き、自分たちの成果を語り合う。
ずっと高く、近づき難い場所に落書きした者が「勝利者」となる。落書き犯たちのあこがれは、サンパウロ市で高さを競うビルの一つで、最上階をすでに落書きされた『テラッソ・イタリア』だという。
高い場所が理想だが、落書き犯は毎日、どこでも建物を汚す。しかも、あるルールに従って。例えば落書きがない壁は避ける。「建物の持ち主が団結していて、落書きをすぐ塗りつぶす証拠だ」とある落書き犯は話す。「俺たちはすでに落書きされた壁を好む」。また、最近被害者にますます使われる、壁の塗り直しに使われるお金は慈善団体へ寄付されますと書かれた看板がかかった壁を、ほとんどの落書き犯は「配慮」するという。
「落書きは社会の中で将来の見通しを持たない青年たちの典型的な反抗を意味する」と落書き研究者のラーラ氏は述べた。「彼らを突き動かすのはアドレナリン(興奮物質)だ」。
正面を落書きされた建物は一〇%も不動産評価額を下げる」とブラジル・マンション保全協会のケイロス副会長は話す。不動産専門家、リベイロ氏は「落書きは、正体不明で刑事罰を受けない敵に対していかに市民が弱いかを表している」と話した。「刑事罰を受けない」ことはフォーリャ紙が取材した落書き犯の言葉と一致する。「警察は大目に見ており、日中でも落書きはできる」とギャング『気違い連中』のマウリッシオは息巻いた。「そんなことはない。我々は引き続き落書き犯を取り締まっている」と軍警社会コミュニケーション課のパガーノ副伍長は反ばくした。
落書きという違法行為は環境犯罪法第六十五条と刑法第百六十三条で規定されている。罰則は罰金に加え、一カ月以上一年未満の服役で、落書きされた建物が文化財であれば、罰則は二倍となる。
サンパウロ市歴史遺産保存研究所のベルナルデス所長によると、サンパウロ市には三百八十件以上の文化財があり、現在そのうちの一〇%が落書きの被害に遭ったという。建物のほとんどが土台部分に落書きされ、それをすべて消し去るために市は三人の人員と年間四万レアルの予算を投入している。
しかし、服役する落書き犯はわずかだ。ほとんどの場合、警部は警察署を洗わせ、床にワックスをかけさせた後、犯人を釈放する。裁判になっても、社会奉仕か、セスタ・バジカ(生活必需品バスケット)相当金額を市保存担当部所に払うかだけだと落書きギャングの一人は話す。
落書き問題に取り組むNGO団体は犯人の逮捕は問題解決につながらないとみる。「最良の解決方法は落書き犯の教育で、市の保安条例を教えることだ」とサンパウロ市役所青年課課長は述べた。