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岐路に立つ農地改革=入植者の30%離農=周到な事前調査が必要=定着率高い先住者

8月20日(水)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙十九日】フランシスコ・グラジアノ農地改革院元総裁は十八日、農地改革入植者の三〇%は農地を転売し定着しないことを明らかにした。サンパウロ州プレジデンテ・エピタシオ郡でサンパウロ州電力(CESP)が一九八三年、造成した開拓地でも十年間にわたり懇切丁寧に農事指導を行ったにもかかわらず、二五%の入植者は離農した。入植者の中には、都市居住者で農地に全く愛着のない人が交じっていると告発した。

 農地改革が、本格的に始まって二十年を迎える。入植者の地域別定着率は、次の通り。北部が五八・二%、中央西部が五九・六%、南部が七四・九%、東北部が八四・九%、東南部が八七・九%、全体で平均七〇・三%。北部と中央西部は、入植者の半数が入植地を放棄して離農している。
定着率を入植者の類別でみると、先住占拠者または先住者が七九・四%、農地占拠運動(MST)指示による入植者が七八・八%、農地改革院の指示による入植者が六四・六%、新規開拓地への入植者が六二・五%となっている。
 先住者は土地の事情を熟知しているので、定着率は高い。農地改革院指定の植民地や新規開拓地への入植者の定着率は、全国平均よりも低い。農業従事者は開拓地に試植をして適作物を模索するが、農地改革院はお役所仕事しかしない。
 CESP造成の開拓地では、入植者に酪農を奨励した。ブラジル銀行は、乳牛購入のために各世帯に一万八千レアルの営農資金を融資した。CESPは、入植者に牛乳加工機器を寄贈した。しかし、牛乳の現地価格と融資決済額はリスクの高い融資として、これを受ける入植者はなく、牛乳機器は使用されることなく放置された。
 ある入植者は農業融資を受け、マンジオカを本格的に栽培した。植え付けた年はキロ当たり九十七レアルしていたが、収穫期には三十五レアルに暴落。融資の決済が、できないのでマンジオカ粉の加工を始めた。スーパーへ売りに行ったが、包装にバーコードがないので仕入れを断られた。
 これまでの農地改革は入植者の質にも問題はあるが、農地改革院の無責任で無計画な運営もあったようだ。農地改革院の農業技官は、入植地の適作物も知らず入植者の生活のための営農計画も知らず、入植者は計画実行の適格者かも知らず計画書に認可を与えている。酪農を奨励しても契約した獣医の訪問は不定で当てにならず、獣医はガソリン代を請求し入植者には負担になっていた。
 治療院に医者は、来ない。学校には、先生が来たがらない。道路整備は全くない。作物の出荷は、どうしてよいか分からない。地下水脈がない所は、井戸を掘れず飲料水にも事欠いている。各入植地では必ず、掘り抜き井戸が欲しいという。
 先住入植者の定着率がよいことで入植者を責める前に農地改革院は、入植地の事前調査を周到に行う必要がありそうだ。