停電は怖い。アメリカ北東部の大停電は凄まじいものだった。NYなどの大都市は真っ暗闇になり地下鉄もストップ。新聞報道によると五千万人の市民が闇の暮らしを強いられたそうだ。カナダのオタワも被害が大きく史上最悪の停電だったらしいが、一九七七年の停電に比べると略奪騒ぎも規模が小さかったのは大いなる救いであった▼どうしてこんな大停電が起きたのかの原因がはっきりしていない。カナダでは北米の発電所に落雷があったとしているが、アメリカでは否定しているし諸説紛々なのである。ただー。専門家筋によれば「起こるべくして起きた」と指摘する。アメリカは電力自由化が進んでおり小売市場での販売競争も激しい。このために発電と送電設備への投資意欲が減退してしまい予備能力は極めて小さい。NY周辺では特に酷い状況だという▼二年前にはカリフォルニア州で大停電が発生し大騒ぎになったしアメリカでは電力不足が大きな政治・社会課題になっていることにも目を向けたい。電気が発明されてから人は真の暗闇を忘れ「夜も明るい」の錯覚に取りつかれてしまった。戦後の貧しい日本でも停電は多く家庭では油を調達しては缶詰の空き缶に芯を付けた手製ランプの灯で闇夜を過ごしたりもした▼今は電気無しの生活はとても考え難い。ご飯も冷蔵庫もTVも冷暖房もコンピューターもー全てが電気なのである。大停電が都市機能を麻痺させ致命傷となるのは今回のNYで嫌になるほどに知ったし、この苦すぎる経験を他山の石として心にしっかと刻みたい。 (遯)
03/08/16