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コラム 樹海

 アフリカ西端の穀物海岸に位置するリベリアを知る日本人は少ない。日本の本州の約半分の領土に三百万人の国民がいる小さな国である。国土は大きくないけれども、税制上の優遇で世界第二位の商船保有国で有名な国だ。独立したのは一八四七年。アフリカでは初めての共和国であり、米国の解放奴隷たちが打ち建てた国家なのである▼リンカーンの奴隷解放宣言は一八六三年。明治維新が一八六八年なのでリベリアの歴史は古い。ところが、この国には部族抗争を軸とした内戦が余りにも多い。独立の栄誉を勝ち取った解放奴隷の子孫たちはアメリコ・ライベリアンと呼ばれ主導権を握り支配階層を牛耳ってきたが、国民の五%を占めるにすぎない。このために残る九五%の部族にも不満が溜まり闘争が始まる▼今、話題になっているテーラー大統領の辞職と反政府軍の首都攻略も内戦が齎したものである。テーラー氏も反政府軍を率いて首都に攻め入り当時の大統領だったドウ氏を殺害した陣営の人なのだ。そのドウ氏自身は陸軍曹長であった一九八〇年にクーデターを起こし政権を奪取した人物なのであり、こんな複雑怪奇が普通に繰り返されている不幸な国とも言える▼テーラー氏が六年前に大統領に選出されたときにも国際世論は決して楽観したのではない。案の定、特産品のダイヤモンドの不法取引に現を抜かし、政治を蔑ろにしてしまった。先の世界の論調は正しかった。リベリアの国名は英語のリバティ(自由)からとったものだが、この国に真の自由が訪れる日の早からんことを。   (遯)

03/08/14