8月13日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十二日】サンパウロ市サンフランシスコ広場で十一日、サンパウロ大学(USP)法学部の学生自治委員会(CA)『オンゼ・デ・アゴースト(八月十一日)』の百周年記念祭が開催された。八月十一日は、ブラジルで初めて法学科が創設された日で、「弁護士の日」としても知られる。式典では、USP交響音楽団が演奏。同広場は人で埋まり、政府の関係者たちが、CAの戦いや民主主義、正義などについて演説を始めようとしていた―。その時、学生が生きた黒い鶏一羽を式典来賓席の前に放り投げた。学生が狙っていた鶏の的は、マルタ・スプリシーサンパウロ市長だった。
マルタ市長は同午前十一時三十分ごろ、式典に遅れて到着。式典司会者が市長到着を告げると、学生たちはブーイングし、「マルタッシャ! マルタッシャ!」と叫び始めた。一部の学生らは一レアル札や十レアル札を持って手を振り、「マルタッシャ歓迎」と書かれた横断幕も掲げた。マルタッシャとは、マルタ市長が街灯税やゴミ税などの新しい〃手数料〃を課税してから付けられたあだ名で、「マルタ」と「タッシャ(税)」を引っ掛けたもの。
市長の演説前には、広場にこだまするほどのブーイングが流れた。市長は機嫌を損ねず、演説を始めた。その時、式典開催数時間前に市立市場で買われた黒い鶏が投げつけられた。
かわいそうな鶏は、胸と首を地面に叩きつけられ、警備員に首を締められながら式典会場を退場。マルタ市長は顔を引きつらせながらも、落ち着いた様子で演説を続けた。
ブラジルでは、黒い鶏はアフリカ系宗教「カンドンブレ―」や「ウンバンダ」の黒魔術(マクンバ)で、相手を追放する、または殺す目的の呪いに使われる。鶏を投げた法学部一年生のエルネスト・ヘルムートさんは、マルタ市長失脚を願って黒い鶏を選んだと説明している。
同学生は学生同盟の一つ〃封建制度党〃のメンバー。現在CAを管理するライバル同盟〃決裂〃が、労働者党(PT)と手を結んでいることを好ましく思わず、「CAは政党と関わってはならない」と抗議するために鶏を投げたという。
マルタ市長は憤慨し、用意していた八月十一日に関する演説をキャンセル。「前政権はサンパウロ市をつぶした」「あなた方中流階層者は学校に行けるチャンスがあった。教育総合センター(CEU)は、それがなかった人のためのもの。それがPT政府のやり方」と、きつい口調で市政について語った。
演説の最後で拍手されたマルタ市長は、サンフランシスコ広場の自由化と、不法な土地に住む人々への法律相談を法学部生に任せる市条例にサインして、早々に式典会場を去った。
市長は記者団に、ブーイングや抗議運動に驚いたと話し、「ここはPSDB(社会民主党)の巣だわ」と厳しく批判。一方、封建制度党の学生たちはPSDBとの関係を否定しており、CAの活動を政党の影響から引き離すことが目的だと説明していた。