8月9日(土)
南(ブラジル)から日本にやって来て、夢が叶うように――。こんな願いを芸名にした日系三世の演歌歌手、南かなこさん(二一)が日本で大きな注目を集めている。今年一月一日に、大手レコード会社のコロムビアからデビューしたばかりの南さんは、このほど新曲の「風枕」を発売。全国各地でのステージを精力的にこなすほか、文化放送の名物番組でDJを務めたり、NHKの番組などにも出演したりと露出も豊富。氷川きよしさんら有名演歌歌手を抱えるコロムビアも、「本格派演歌超大型新人」として売り込みに力を入れている。南さんは「紅白歌合戦に出て、故郷のブラジルでコンサートをしたい」と母国に錦を飾る日を夢見ている。
サンパウロ生まれの南さんの本名は、上野智恵美。一九八一年にサンパウロで生まれ、父の仕事の関係で十二歳の時に渡日した。オーディション会場で、小林幸子さんやその事務所社長ら業界関係者の目に留まり、憧れの芸能界入り。今年元旦に発売したデビュー曲「居酒屋サンバ」は、格付け会社オリコンの演歌チャートで最高二十位を記録し、二万枚を超える売り上げに達するなど不振が続く演歌業界では異例の活躍ぶりをみせた。
ブラジルで育った幼少時代に、祖母に子守歌として日本の演歌を聴かされ続けた南さんは「日本の歌と言えば演歌」というぐらい演歌になじみ続けてきた。デビュー以来、NHKの「歌謡コンサート」や同局のFM番組などにも出演、現在は文化放送の名物番組である「走れ!歌謡曲」でレギュラーDJとしても人気を集めている。
サンバ調だったデビュー曲と異なり、最近発売された新曲「風枕」は、しっとりとしたメロディーが耳を引く本格演歌。別れた恋人を思いながら、みちのくを旅する傷心した女性の思いを歌っている。
〈辛くて身が痩せる〉という歌詞についても、南さんは「私は落ち込んだら、やけ食いして太るタイプ。歌詞を理解するのに苦労した」とブラジル人女性らしい悩みを吐露する。
紅白歌合戦の常連でもある小林さんを目標にするという南さんは「ブラジルでも紅白は人気がある」と憧れの舞台に思いをはせる。