7月30日(水)
国際淡水年を記念して日伯の知識人、行政・技術担当者らによるシンポジウム「水ー生命の源」(サンパウロ総領事館、JBIC、JICA、SABESP、オイスカ、サンパウロ大学工学部が主催)が二十二日、サンパウロ大学工学部講堂で開かれた。
次期OECD事務次長に決まっている赤阪総領事が開会式で講演したほか、パネリストとして日本からパシフィック・コンサルタンツ・インターナショナルの武智昭氏が参加。JICA、JBICが進めるグァナバラ湾での環境改善事業について説明した。
武智氏は、東京湾の下水道普及による水質改善を事例として、グァナバラ湾の環境改善策を説明。「東京湾に注ぐ多摩川は、下水道が五〇%普及したのを堺に水質が大きく改善した。下水道普及がある程度の率にならなければ、伯でも改善が望めないことがわかる。まず、あのグ湾の匂いを取ることを目標にしたい」と決意を語った。
シンポジウムではブラジルにおける水資源の戦略・政策、環境教育の現状が報告され、集まった約四百五十人の聴講者はメモを取るなど熱心に耳を傾けていた。
十人の講演者のうち注目を集めたのはトップ・バッターをつとめたグスタヴォ・ファレイロス氏、二十五歳。今年三月に京都で開催された世界水フォーラムで世界銀行から表彰された、ヴァロール・エコノミコ紙などで執筆する環境ジャーナリストだ。
グスタヴォ氏は世界の淡水の一二%を保有するブラジルは、「投資不足もあって、六二%の国民が良質で十分な水を使える環境にない」と指摘。政治的に水の権利を普遍化していく必要性を訴えた。
また、世界の淡水の多くが農業に消費される現状を紹介。「例えば一キロのじゃがいもを生産するためには千リットルの水がいる」。国内ではサンフランシスコ川沿いの潅漑農業を引き合いに出し、設備技術の遅れなどのせいで、「水使用の無駄が目立つ。河川にあるダムの水位も下がってきている」と問題視した。
最後に、「後進国がもし現在の先進国のようになった場合、地球環境はそれを受け入れる下地はない」としたグスタヴォ氏はブラジルの発展モデルは環境との共存にあると強調。「アグロビジネスに頼った経済成長は、”搾取”の歴史の繰り返すことになるだけ」と切り捨てた。
シンポジウムの最後に赤阪総領事があいさつ。「今回のシンポジウムで紹介された日伯間の交流が従来のように政府レベルではなく、NGOレベルでの展開を期待している」と提言した。