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コラム 樹海

 日本移民95周年のことしは、戦後の再開移民50周年でもある。戦前はもちろん戦後も同様だが、ポ語の勉強に欠かすことのできないものに大武和三郎著「葡和辞典」があった。辞典がいくつもある今日と違い、移民にとってオオタケ辞典が唯一の頼みであったし、助けられた。感謝の思いはみな同じだろう▼その「葡和辞典」が発刊されたのは一九一八年、最初の日本移民を乗せた笠戸丸が着伯してちょうど十年目である。この年にソロカバナ線アルバレス・マッシャードにブレジョン植民地が創設されている。北海道開発のベテラン小笠原一族と星名謙一郎(愛媛県、のち暴徒の凶弾に斃れる)を中心にすすめられた。入植者は〃奥ソロの魔境〃に斧を入れ命を賭けて取り組んだ。並の開拓ではなかったと伝えられている▼この地には先駆移民の眠る墳墓がある。『日本人墓地』と呼ばれ、過去帳に記された死者は七百八十四人にのぼる。これほど大規模の『日本人墓地』は当地にふたつとない。先々週、ア・マッシャード日伯文化協会(田村文明会長)が招魂祭と併せて開拓先亡者慰霊追悼法要を営んだ(本紙二十六日付6面)。ことしで八十三回目という。こうして地元の文協が先駆者の御霊を守り、こんにちに至っている。開拓者の末裔はブラジル各地に散らばり離れていても招魂祭を忘れることはない▼次世代によって日本移民の「闘魂」が消えることなく連綿と受け継がれていくのだとしたら心強い限りだ。     (田)

03/07/30