7月18日(金)
「ばらまきだ」「顔が見えない」との批判が耐えない日本政府のODA(政府開発援助)。また、最近ではODAを巡る汚職などが取りざたされたことなどからも、とかく暗いイメージが付きまといがちだ。日本国内ではもちろんのこと、JICAとは繋がりが深いはずの日系社会でさえも、日系社会以外でのODAの貢献ぶりを知る機会は数少ない。環境の世紀と言われた今世紀、資源大国ブラジルで大きな役割を果たしているJICAのプロジェクトや専門家の奮闘ぶりを、サンパウロ、ベレーンの両支所の全面的な協力を得て現地取材した。
□ □ □
全長六七七〇メートルに及ぶ世界最長のアマゾン川の河口に位置するベレーン。パラー州の州都でもあるこの町は、人口約一二〇万人を数える大都市でありながら、町中にはヤシの木やコロニアル様式の建物が点在し、熱帯ムードを醸し出す。
ポルトガルによる要塞が築かれた一六一六年以来の歴史を誇るこの町を拠点に、JICAベレーン支所(芳賀克彦支所長)は、地元パラー州を始めとしてアマゾナス州、ロンドニア州などブラジル北部の八州を管轄。職員数こそ、それぞれ十五人を抱えるブラジル事務所やサンパウロ支所(小松雹玄支所長)より少ない六人の小所帯だが、担う役割は非常に大きい。
深刻な環境破壊が懸念され続けるアマゾンの未来を救いうるプロジェクトが、同支所管内のベレーンとマナウスで進められている
□ □ □
ペルーやギニア、コロンビアなど南米九カ国にまたがる「熱帯アマゾン」とは別に、ブラジルはパラーやロンドニアなど九州からなる「法定アマゾン(以下アマゾン)」を政治的に区分。その面積は日本の国土面積の約十三倍に相当する四八九万平方キロに達している。
人類の共通財産として貴重な価値を持つアマゾンが、危機にさらされているのは誰もがよく知る事実だ。
七〇年代以降、ブラジル政府の国策で農牧業を営む小規模農家や企業が進出。六〇年代半ばから八五年までに同地域で建設された道路の総延長は四六〇〇〇キロに及ぶという。九八年の時点で約五四万平方キロの森林が消失、これはフランス全土に匹敵する。
「あくまでも数字の上ですが、このまま行くとアマゾンは消失する」。芳賀支所長の懸念を裏付けるようなデータが今年六月末、ブラジル各紙に掲載された。
□ □ □
〈九五年以降アマゾンで失われた森林が最大に〉
過去十五年間にわたってアマゾンの森林監視を続けてきた国立宇宙調査院(INPE)は、昨年のアマゾンの森林伐採が約二五五〇〇平方キロに当たる、と発表。過去最悪を記録した九五年以来の数字となる結果だけに、フォーリャ紙などブラジル各紙は一面トップで扱った。環境保護団体のグリーンピースは「現状が続けばあと百年でアマゾンはほぼ消失する」と警笛を鳴らす。
九二年にリオデジャネイロで開催された地球環境サミットを機に、ブラジル政府も開発から森林保護へと一八〇度の政策変更。
アマゾンの熱帯雨林を保全し、持続可能な森林管理の方向性を探ってきた。
現在、ベレーンとマナウスでJICAがブラジル政府機関と合同で実施している二つのプロジェクト。場所やテーマこそ異なるが、根底に共通している概念は「持続可能な開発」だ。
(下薗昌記記者)