7月17日(木)
【エポカ誌】農地占拠運動(MST)が始まった二十年前、MSTたちは官憲当局とのたいじで銃剣代わりに使った幼児が、いまやMSTのリーダーとして先頭に立って活躍している。
多くはMSTの掘っ建て小屋の中で生まれ、MST学校でMST理論を学び、二世指導者へ成長した。五万人ともいわれる農民兵を率い、手にマイクを持ち示威活動から占拠や略奪を指令する師団長なのだ。
最も過激なのがジョアン・P・ロドリゲス(二三)、サンパウロ州西部のポンタル・ド・パラナパネーマ生まれ。ピラシカバ市のメソヂスト大学で、哲学科を専攻した。七月二日、大統領とプラナウト宮で会見した前日には、ペルナンブッコ州で食料品輸送中の運転手と助手四人を拉致して、積み荷略奪を指揮した。ほかに四台のトラックをも襲っている。
ロドリゲスをはじめMSTの新リーダーらは、ブラジルの改革は革命以外にないと豪語している。初期のリーダーらが空腹を抱えて戦ったのから較べると、新リーダーらは何ら不自由をせずに育った。
MST集団地で生まれた児童は、マルクス理論からレーニン思想や毛沢東思想を学ぶ。児童十人の中から二人を将来の指導者として選び、さらに思想教育や軍事教練を施す。残り八人は、畑で労働者として働く。
ルーラ大統領がMST代表をプラナウト宮に招き農地改革を優先政策の一つとし、下半期から積極的に遂行することを約束した。新政権の雇用創出が公約通りに進行せず失業者は巷間にあふれ、MSTへ参加する者が急増している。
キューバの青年たちはフロリダ州を夢の国とあこがれ、東欧の青年たちは鉄のカーテンが取り払われたことを祝う時代に、MSTの青年らはプロレタリア革命を夢見ているらしい。チェ・ゲバラは彼らの偶像で団体の規律のシンボルだ。
南大河州ヴェラノポリスに、MSTの幹部養成所がある。MSTの子女の中から優等生六百十三人が、農業技術、師範課程、組合理論、経営学などの専門教科を学ぶために送られてきている。ほかに、パラー州カラジャースで起きた軍警や地主らの雇い兵と対決するときの訓練も行われる。
MST社会で生まれて育った青年男女は、この社会を離れて暮らせないという。キブツ(イスラエルの共産村)方式が取り入れられて、実践されている。イベントも再々行われ、男女交流の場も盛んだ。MST同士はお互いに私生活のことまで知っているので、大家族のようなものといっている。