7月8日(火)
【エスタード・デ・サンパウロ紙、フォーリャ・デ・サンパウロ紙七日】大サンパウロ市圏グアルーリョス市のデゼンバルガドール・アドリアーノ・マレイ刑務所で七日午後四時十五分ごろ、ヘリコプターを使って受刑者奪回を試みた事件が発生した。ヘリは、受刑者二人の奪回をたくらんでいた男二人にハイジャックされ、同刑務所屋上に着陸。奪回を阻止しようとした同刑務所の防壁警備員らとヘリ内の男たちが銃撃戦となり、負傷者が出た。ヘリの操縦士は犯人に抵抗し、銃撃されて重傷を負った。奪回は失敗し、犯人らは逮捕された。サンパウロ州で起きたヘリを使った受刑者奪回作戦は、これで二度目となった。
奪回されるはずだった受刑者は、アレシャンドレ・ドス・サントス受刑者(二九、通称セッコ)とロジェーリオ・M・シウヴァ受刑者(通称バレアード)の二人。
セッコは、犯罪組織PCC(首都第一コマンド)の一員で、二十五年四月の刑を言い渡された。昨年十一月に同刑務所に収容された。バレアードは、一九九七年に銀行強盗事件専門刑事を殺害し、セッコと同じ監房で服役。ヘリ着陸時には屋上におらず、その後の警察の捜査でバレアードも奪回される予定だったことが分かった。
以前、軍警の役目だった刑務所の防壁監視を担当する防壁警備員との銃撃戦で、ヘリを乗っ取ったジャクソン・C・シウヴァ容疑者(一九)とジョアン・M・オリヴェイラ容疑者(二六)、そしてセッコの三人が負傷した。
アレシャンドレ・F・A・コラッソ操縦士(二八)は、ヘリを乗っ取った男の一人に撃たれた。市警によると、セッコが「自分がヘリに乗った後、操縦士が刑務所から離陸するのを拒否したので、仲間(シウヴァ容疑者)が操縦士を撃った」と供述したという。
同操縦士は頭部、胸部、腹部を撃たれ、六日に弾丸を除去する手術を受けた。同操縦士は左脳を傷つけられ重体。七日午後一時の時点では、人工呼吸器を使って呼吸していた。
昨年一月、同市ジョゼ・パラーダ・ネット刑務所で、同じ手口で受刑者二人が奪回された(コラム『東西南北』参照)。古川長サンパウロ州刑務所管理局長官は、すべての刑務所の防壁警備員に、「飛行物体が五十メートル以内まで接近した場合、威嚇射撃せよ」と命じた。
今回の事件でも同警備員らは、その命令に従ってヘリに向かって発砲した。だが犯人らは、操縦士に着陸を強制。着陸後、犯人らは警備員らに向かって発砲、銃撃戦が始まった。
サンパウロ州保安局によると、セッコはほうきの棒と布ではしごを作り、刑務所屋上まで上った。セッコが収容されている監房は、屋上のすぐそばにある。
銃撃戦が起きた時、刑務所は親族の訪問時間で、銃声を聞いた人々がパニックに陥った。携帯電話を使って奪回作戦の手助けをし、訪問者として刑務所内に入ったエーリカ・G・アントゥーネス容疑者(二一)も逮捕された。
犯行に利用されたヘリ『ベル・ジェット・レンジャー』は、エアータクシー会社『アーラモ』の四人乗りヘリ。犯人らは、飛行機レンタル社『ヘリマート』で、観光目的でヘリを借りた。同社は犯人らが望むヘリがなかったので、アーラモ社に借りた。このような手続きはよくあることだという。
ヘリはサンパウロ市西部ブリガデイロ・ファリア・リーマ通りのビル屋上から離陸。犯人らの身元を確認するような手続きは一切行われなかった。飛行中、コラッソ操縦士は犯人に取り押さえられ、刑務所へ向かうよう指示を受けた。