6月27日(金)
【フォーリャ・デ・サンパウロ紙二十六日】パロッシ財務相は二十五日、ブラジルは完全にインフレを克服したと宣言した。もはや往年の高率インフレの再来はないとし、今度は経済成長へ向けて国民の積極的な協力を要請した。政府は金融取引の活性化に向けた一連の対策を発表。低所得層や零細企業向けに三十九億レアルの資金を投入し、国内消費と設備投資の活発化を図り、貧困問題の解決を目指す。
政府の経済政策は、第一段階では満足すべき結果であったと勝利宣言を行った。カントリー・リスクは低下し、企業は国際金融で外資を容易に調達していると、財務相は述べた。
ブラジルは低率インフレのもとに経済成長を成し遂げると財務相は宣言した。
「経済成長にインフレはつきもの」とか「ゼロ・インフレは経済後退」という観念は、過去のものと財務相は告げた。このような経済理論は混沌状態のときの考え方で、ドサクサの中の金もうけは混乱と悪性インフレの落とし子だとした。
今日の経済指数が理想的に収拾したのは当を得た緊縮財政と通貨政策のたまもので、こんな条件下の経済成長が健全な経済だと述べた。戦争特需などによる経済成長は、火事場泥棒のようなもので本来の経済成長ではないと、経済理論を披歴した。勝ってかぶとの緒をしめるように、初陣に勝利を収めたことを祝うだけでインフレ退治は継続されると、財務相は戒めた。
一方、屈折した経済発展をもたらした銀行のスプレッド(金利差)取引は、抑制すると述べた。現行の銀行システムは、低所得層を年利三七〇%の高利をむさぼるサラ金へ追いやり、消費市場を弱体化させた。政府は金融システムの回転方向を逆方向へ回すと、財務相は警告した。
政府は二十五日、低所得層向けの三十九億五千万レアルの低利融資を発表した。融資額は個人向けが六百レアル以下、零細企業は千レアル以下、月利二%だ。これで二千五百万人が、生まれて初めて銀行口座を開くと予想される。
資金源は市中銀行の預金から十五億レアル、労働者保護基金から十三億レアル、開発銀行(BNDES)から十億レアル、国庫から一億五千万レアルだ。
EUでは銀行融資の二〇%を占める小口ローンが、ブラジルでは一・五%に過ぎない。口座開設の手続きを簡素化し、月十二回までの取引は手数料を免除。低所得者向け「大衆銀行」や車など耐久消費財や農業機材の購入組合、地方経済活性化に向けた同業者組合の設立を奨励し、設立基準を緩和すると発表した。
リオ国立大学のフェルナンド・カルジン教授は、国民が必要としているのは六百レアルではなく雇用であり産業振興だと、大衆銀行を糾弾した。マクロ経済の見地から社会政策に小口金融は、〃猫に小判〃ではないかと指摘した。民間銀行が政府の呼びかけで低所得層への融資に応じるのは、非現実的だと批評した。