6月21日(土)
【ブエノスアイレス発・堀江剛史記者】アルゼンチン日系社会の歴史を後世に伝えようー。『アルゼンチン日本人移民史』の編纂事業が戦前編、戦後編の二部構成で進んでいる。昨年六月にはすでに『戦前編』の千部が発行された。初めて日系社会が主体となって、編纂事業を行った亜国日系社会の歴史を総括する移民史は、内外の関係者の注目を集めている。来年三月には、『戦後編』の発行が予定されている。収集した証言や資料の編纂作業を行っている同史実行委員会を訪れ、崎原朝一編集委員長に話を聞いた。
【ブエノスアイレス発・堀江剛史記者】アルゼンチン日系社会の歴史を後世に伝えようー。『アルゼンチン日本人移民史』の編纂事業が戦前編、戦後編の二部構成で進んでいる。昨年六月にはすでに『戦前編』の千部が発行された。初めて日系社会が主体となって、編纂事業を行った亜国日系社会の歴史を総括する移民史は、内外の関係者の注目を集めている。来年三月には、『戦後編』の発行が予定されている。収集した証言や資料の編纂作業を行っている同史実行委員会を訪れ、崎原朝一編集委員長に話を聞いた。
アルゼンチンの移民元年には諸説あるが、一八八六年にイギリス船に乗ってアルゼンチンに上陸した牧野金蔵氏を第一号とするのが主流とされている。
同国日系社会では、一九八六年に移民百周年祭を挙行しているが、移民史の編纂は行われていない。
亜国での日本人の歴史が始まって約百二十年、初の歴史編纂―。
「遅かったのは事実です。実は六〇年代から、移民史を編纂しようという話はあったんですが、経済的、人的な問題、日系社会の不調和などの問題もあって・・・」と崎原委員長。
その間における一世の証言者の損失は大きいが、「それをカバーすべく、七十歳以上の高齢二世などへの取材を積極的に行った」と付け加える。
初めてとはいっても、賀集九平氏が個人で出版した『アルゼンチン同胞五十年史』(後に八十年史も出版)があり、「今回の編纂作業での貴重な基礎となっている(崎原委員長)」という。
アルゼンチン日本人移民史編纂実行委員会(一色田眸委員長)は、社団法人在亜日系団体連合会(FANA)の一委員会として、〇〇年四月に設立されている。
発足当時メンバーに加え、さらに十名以上のメンバーが名乗りを挙げ、現在約四十人の委員が戦後編の完成に向け奔走している。
戦後編では日本とアルゼンチン両国の世相の中で「移住再開」「日系社会の発展」「転換期に入った日系社会」「デカセギ現象」などを主題にした内容になっており、タンゴと日本の関わりなどにも触れるなど興味深い内容となっている。
「時間的な制約などもあって、この移民史が全てを総括したとはいえない」と話す崎原委員長だが、「将来、研究者やアルゼンチン日系社会に興味のある人が、この移民史をベースにその内容を更に深めてもらえば」とその希望を語る。
最近では事業の協力者三人から、二八〇〇ドルの寄付がFANAと同委員会にあるなど(らぷらた報知六月五日付け)、編纂事業への期待も高まっているようだ。
編纂作業終了後には、数年間に渡る事業の中で収集した資料を保管する資料館を、FANA内に作る計画もすでにあるという。
「二世などから『早く読みたい』いう声も高い」というスペイン語版は、一般書店で販売する予定もあり、アルゼンチン国内で日系社会が注目を浴びる日も近いかも知れない。(『戦前編』の希望者はFANA(電話=54・11・4307・2026)まで。Eメールならlibro-imin@santei.com.brもしくはfana@santei.com.brまで。