6月6日(金)
【エスタード・デ・サンパウロ紙、フォーリャ・デ・サンパウロ紙五日】ルイス・イナッシオ・ルーラ・ダ・シウヴァ大統領は四日、サンパウロ市アニェンビー・コンベンション・パラスで開かれた第八回中央労組(CUT)全国集会で演説した。経済政策として年金・税制改革案を押し進める姿勢を明らかにしたところで、会場にいた労働者二千人のうち同労組左翼過激派約百人からブーイングを浴びた。ブラジルの大統領がCUT集会に出席したのは今回が初めて。そしてルーラ大統領自身がば声を浴びせられたのも初めてだった。
大統領は、「わたしはブーイングを気にしない。ブーイングは称賛の拍手同様に大切なものだと考えている」と切り返し、「一九八三年にCUTを創設しようとした時も、反対派からあれほどば声を浴びせられたのを、皆覚えているだろう」と呼びかけた。
会場には、国際通貨基金(IMF)や年金・税制改革に反対する内容の横断幕が張られていた。「反対意見の横断幕などつくらずに、我々との意気投合を目指すためにも諸君の意見を直接聞かせてほしい」と大統領が訴えると、過激派労働者たちは大人しくなった。
大統領は、「現政権発足からまだ五カ月。評価するのは早すぎる」とし、「人間だったらまだ五カ月の胎児だ。生まれる前からかわいくなるか、醜くなるかなど分からない」と例え、理解を求めた。
CUT側が最も懸念しているのは、年金・税制改革案で、特に退職した公務員から負担金一一%を徴収するという案に反対している。公務員は、CUT組員の三五%に相当する。ルーラ大統領は、「ブラジル史上最重要の公務員部門の給料・職務計画を実行する」と公約した。
ルーラ大統領は、「雇用を増やし、この国に必要な改革をして、ブラジル経済を再び成長させよう」と声明。雇用を百二十万人分創出する観光面での計画や、精神病患者のいる家族に対する支援計画、ペルナンブーコ州地方都市の小農家五十万世帯への特別ローンの開設、専業農家への資金増加などを公約した。だが、ルーラ政権のイメージダウンの主因である金利引き下げについてはコメントしなかった。
出席していた報道関係者に対しては、政府の新政策に関した報道が不足していることを非難した。「新聞やテレビを見ても、新政策について一切触れていないので驚いた」。
招待国代表として出席したG8サミットについては、「中国やロシア、インド、南アフリカの大統領らに、『我々が力を結束した時、G8は我々に敬意を表して招待するだろう』と述べた」と語り、「英語が話せなくても国際的な尊敬を集められることをわたしは証明した」と言明。「大切なのは、一億七千五百万人のブラジル国民のために、純粋でシンプルなポルトガル語を話すことだ」と言及し、会場から拍手がわいた。
過激派のば声を完全に制したルーラ大統領は、「諸君の同志であるわたしは、諸君のおかげで大統領に就任した。政治生活での約束を忘れたわけではない。ブラジル経済を共に改善しよう」と目に涙を浮かべて演説を終えた。