6月5日(木)
日本の愛唱歌をショーロ、ボサノヴァなどのブラジル音楽に編曲した作品を収録したCDアルバム「カフェ・サウダージ」が日本のバーチョ・レコーズから発売され好評を博している。楽曲はすべて昨年五月にサンパウロで録音されたものだ。「童謡もブラジル流にアレンジされるとこのようになるのか、とワクワクした」(七〇代男性)。若者向けを意識したアルバムというが、日本ではシルバー世代からの人気も高い。ブラジルでの発売に合わせて来伯したディレクターの宇野陽一さんに聞いた。
「日本の愛唱歌に響く情感が他国の音楽とどう出会うか。企画が生まれたきっかけはそんな興味に始まった」と宇野さんは話す。「でも、実際は外国での楽曲指導には苦労しっぱなし」。
前作は「赤とんぼinNewYork」。日本の愛唱歌がニューヨークでジャズと出会った。シリーズ二作目の「カフェ・サウダージ」では「古典には古典を」との直感が働き、数あるブラジル音楽のなかからショーロを選んだ。「サンバやボサノヴァ風にした曲もありますが、まずショーロに目をつけたのは結果的に成功だった」と仕上がりに自信をみせる。
バンドリンの旋律が見事に調和した『月の砂漠』は特に「うまくいったと思う作品」。もともとボザノヴァだったかのような印象を受ける『浜辺の歌』、バイヨンのリズムに乗った『赤とんぼ』などが収録され、「飽きない一枚」(宇野さん)になっている。
アルゼンチン・タンゴが次の狙いだ。「南米でいえばキューバの音楽。欧州ではフランスのミュゼット、アメリカではニューオリンズ・ジャズかな」。日本の愛唱歌が世界の音楽とどのような出会いを果たすか。その思いは膨らむばかり。大正十年に童謡として世に出た『赤とんぼ』が二十一世紀の世界を飛び回る。
『カフェ・サウダージ』の総合プロデューサーは写真家・浅井慎平さんの長男、竜介さん。サンパウロ在住の坂尾英矩さんが音楽監督、長女のパトリシアさんが訳詞を手掛けた。クイッカの名手オズワルヂーニョ・クイッカさんや、日系三世の歌手パウラ・ナオミさんが参加していることも話題だ。
入手希望の方は松永さん(電話3731・4623)まで。