11月29日(土)
【フォーリャ・デ・サンパウロ紙25日】1966年11月28日、ブラジル初のショッピングセンター「イグアテミー」が新築落成した。式典には約5000人の人々が訪れ、シッコ・ブアルケ・デ・オランダやナーラ・レオン、シッコ・アニージオなどのタレントが集まり、盛大なショーを開催した。―今回のフォーリャ紙特別企画「わたしはあの時あの場所にいた―サンパウロ市制450周年記念特集」は、バッグ・旅行グッズ関係のチェーン店「アルヴィ」の店主、ヴィダル・ヴェイセールさん(64)を取材。彼は、同ショッピング開店から現在に至るまで、イグアテミーの中で自分の店を経営してきた人だ。
イグアテミーは、サンパウロ市ジャルジンス区ブリガデイロ・ファリア・リーマ大通りにある。ヴェイセールさんはイグアテミー開店当日、記念式典のショーをほとんど見ずに、自分の店に訪れる多くの客の対応にてんてこ舞いだったという。
アメリカで初めてショッピングセンターが開いたのは1922年。カンザスシティーにある同店は今でも営業している。そして1960年代、ブラジルでもショッピングセンターを建設する動きが出てきた。
だが心配される点が一つあった。○○通りなどという専門店街で買い物をすることに慣れているブラジル人が、ショッピングセンターの中での買い物スタイルに慣れるだろうかという点である。
「何せ、新しい概念だったから。アメリカで大成功した商業システムがブラジルでも通用するとは限らない。商業関係者は皆、不安に思ってましたよ」と、ヴェイセールさんは思い起こす。
イグアテミーには計75点のブランド商店が集められた。高級洋服店が建ち並ぶアウグスタ通りの顧客たちを引き寄せるために、〃屋根付き商店街〃や駐車場がショッピングセンターの目玉となった。
だが、ショッピングセンター内で経営する商店にとって最悪の試練は、商店街などのアウトドア形式の買い物に慣れているブラジル人たちが、ショッピングセンターというインドアの買い物形式を受け入れることを信じ、消費者の習慣が変わるのをひたすら待ちつづけることだった。
「町中の大ニュースを一目見ようと、多くの人々がショッピングセンターを訪れた。時折、サンパウロ州地方や学校などの遠足バスまで来た。でも、肝心の買い物をしてくれるお客さんはさっぱり・・・」と、笑う。
さらにショッピングが建設された地域は住宅街で、緑もまだ多く、当時はとても商業の中心地になるとは考えられなかった。
「幾年も経ってから、やっと映画館やエアーコンディショナーが設置された。競争相手となるほかのショッピングセンターもなかったので、一体何をすれば人々の関心を引けるのかが分からなかった。イグアテミーはブラジルのショッピングセンターの実験台になったのです」。
食堂街の建設は1970年代に行なわれた。あの有名な水時計が登場したのは1982年。「都市化が進み、治安が悪くなると、皆安全なショッピングセンターで買い物をするようになった」。
イグアテミー開店から5年後には、商店数は160店に上った。現在では330店ある。アメリカの商業スタイルが成功したのだ。ヴェイセールさんは結局、路上の商店をすべて閉め、ショッピングセンターだけに店を開くことに専念した。「この概念をサンパウロに定着させた者の一人として、『サンパウロ市民はショッピングセンター好き』と聞くのは非常に喜ばしいことです」と胸を張っている。